ソフトバンク、“出前”強化の密かな狙い…ウーバーイーツも出前館も事実上傘下に

 20年2月末時点の出前館の現預金は約13億円。これでは競争に勝てない。既存株主のLINEとの提携強化で、出前館は300億円の軍資金を手にした。

 LINEはなぜ、出前館の出資要請に応じたのか。LINEはあらゆるサービスを1つのアプリで提供する「スーパーアプリ」化を目指しており、食の領域はこの計画実現に欠かせない分野だ。

 LINEは出資を決めただけではない。50人の開発人員を出前館に派遣する。まず年内をメドに出前館とLINEの出前サービス「LINEデリマ」を出前館に一本化する。その後、出前館とLINEのユーザーIDを統合し、国内8300万のLINEユーザーが面倒な手続きなしで出前館を利用できるようにする。LINEはウーバーなどとの競争に打ち勝つ態勢を整える。

ウーバー、ディディ、出前館はいずれもソフトバンクグループ

 LINEはヤフーを傘下にもつZホールディングス(ZHD)との経営統合を目指している。今秋をめどに実現するが、ZHDの筆頭株主はソフトバンク。LINEとZHDが統合する新会社はソフトバンクの連結子会社となる。そして、ソフトバンクの親会社はソフトバンクグループ(SBG)。SBGのファンドがウーバーの筆頭株主になっている。ディディにもSBGが出資している。これで奇妙なことになる。デリバリーサービスで競争している3社の最大の株主は、いずれもSBGなのだ。将来的には、出前館とウーバーの「ウーバーイーツ」が協業・統合することもあり得る。

中村利江社長は中興の祖

 出前館の波乱万丈の歴史を振り返ってみよう。創業者は花蜜伸行氏。バイク便から身を起こし、1999年、夢の街創造委員会(現・出前館)を設立。世界初の出前の仲介サイト・出前館を始めた。2002年にスカウトしてきた中村利江氏に社長を任せ、花蜜氏は会長に退いた。中村氏は関西大学文学部を卒業、1988年、在学中からアルバイトをしていたリクルートに入社。月刊ハウジング事業部に配属され、入社1年でトップセールスウーマンとなった。インテリアコーディネーターを経て、98年、ハークスレイ(ほっかほっか亭本部)に入社。ケータリング事業部を立ち上げた。

 2001年、プランニング会社のキトプランニングを設立。02年、創業者の花蜜氏に招かれて夢の街創造委員会の代表取締役社長に就いた。この当時、出前館は加盟店へメールで出前の注文が流れるようになっていた。しかし、飲食店ではネット環境が整っていないところが多かったため、中村氏はFAXと電話で伝える発注システムテに変えた。05年に黒字化、06年6月に大阪証券取引所ヘラクレスに上場を果たした。この年、中村氏は日経WOMANの「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」を受賞した。上場という目的を果たしたことで退任。09年、カルチュア・コンビニエンス・クラブに招かれ、最高人材責任者として取締役執行役員となった。

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