日本で「経済や生活苦を理由とした自殺者の数」が最も多かったのは、2003年の8897人。この年は完全失業率が5.3%と近年ではもっとも高い水準だった。その後、失業率は低下して自殺者も減るが、08年に発生したリーマンショックで再び状況が悪化。09年の失業率は5.2%に跳ね上がり、経済や生活苦による自殺者も8377人へと急増した。その後、2012年12月に第二次安倍政権が発足してからは、アベノミクスの効果か否かはさておき、失業率も下がっていき、経済苦による自殺者も減り続けていった。(グラフ参照)

【コロナ】経済苦の自殺者、感染の死亡者を上回る懸念…行動自粛、1年は継続との見方の画像2

非正規雇用の増加も影響

 精神科医で早稲田大学准教授の西多昌規氏の分析によれば、「日本は他のOECD諸国に比べて、自殺と失業率との相関が大きい。近年の自殺対策白書では、これまで注目されていた失業や就職失敗だけでなく、『事業不振』『生活苦』も自殺者増加と強い関連があるという結果が出ている」という。

 教育社会学者の舞田敏彦氏も、失業率と男性の自殺率の関連は日本特有のものであるとし、「ニューズウィーク日本版」(CCCメディアハウス/4月8日号)では、失業率が1%上がると自殺率が4.2ポイント上がると指摘している。

「(日本の)男性人口を6000万人とすると、失業率1%アップで自殺者が2520人増える計算だ。2%アップで5000人、4%アップで1万人の自殺者が出る。寒気がするデータだが、コロナにより各地で雇い止めが起きていることを思うと、失業率2%(もしくは4%)上昇はあり得ないことではない」

 今の日本において、失業率1%上昇はいとも簡単に起きうると考えたほうがよい。バブル経済崩壊前の1989年2月末の非正規雇用者数は817万人で全体の19.1%にすぎなかったが、リーマンショックのあった2008年2月には1765万人にまで増えた。これは全体の34.1%にもなる。そして、2019年9月には非正規雇用は全体の38.7%、2202万人にまで膨らんだ。こんな社会構造においては、解雇や雇い止めは簡単に行われるだろう。

「安倍首相は『悪夢のような……』と言っていたが、東日本大震災のとき、民主党政権は倒産防止のためのモラトリアム法などで、被災地や中小企業に手を差し伸べた。現政権よりずっと国民に寄り添う姿勢があった。安倍政権の経済対策は結局、金持ち優遇でしかない。このままでは中小企業の倒産が相次ぎ、自殺者が続出してもおかしくない。その数はコロナ感染による死者より、はるかに多くなりかねない」(和田氏)

 緊急事態宣言による行動自粛で新型コロナの犠牲者を数百人救ったとしても、経済活動の自粛にはそれ以上の副作用があるかもしれない。

(文=横山渉/ジャーナリスト)

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