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広島知事が県職員に10万円拠出を要請、「コロナ対応で職員も深夜残業」「一種のパワハラ」

文=編集部
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広島県公式ホームページより

「いつも言うことですけれども、何かこうマジック・スパイスみたいなものがあって、それを振りかけたら突然財政状況が良くなります、なにかみんながハッピーになります、みたいなことはない」

 広島県湯崎英彦知事は2月17日、令和2年度一般会計当初予算案の記者会見でそう述べた。新型コロナウイルス感染症に伴う政府の緊急経済対策として全国民一律に給付する10万円は降って湧いた「マジック・スパイス」だったのだろうか。湯崎知事は今月21日、突如、この一律給付の10万円を県職員から供出してもらい県財源に充てるとの方針を示した。

県職員2万5000人から10万円を供出

 読売新聞オンライン版は21日付記事『広島県職員から「10万円」供出、県の財源化検討…全員なら計算上25億円』で、次のように伝えている。

「県の休業要請に応じた中小企業などに支払われる10万~50万円の協力支援金の財源約100億円が必要で、湯崎知事は『聖域なく検討したい』と述べた。

 県によると、県警や県教委の職員も含む約2万5000人が対象で、全員が受け取れば計算上、総額25億円に上る。県の財政調整基金の残高は、2018年7月の西日本豪雨からの復旧などで取り崩しが続き、20年度末の残高は33億円の見込み。湯崎知事は『感染拡大防止のためにやらなければいけないことはたくさんあるが、圧倒的に財源が足りない』と理解を求めた」

西日本豪雨に伴い財政ひっ迫

 いったい広島県の財政はどのようになっているのか。ここで、冒頭の湯崎知事のコメントがあった本年度予算案の会見を振り返ってみよう。同県予算案によると、今年度の当初予算案は1兆905億円で前年と同水準。内訳として2018年西日本豪雨からの「創造的復興による新たな広島県づくり」に1087億円、「欲張りなライフスタイルの実現」に向けた主要事業に264億円を計上していて、湯崎知事は「重点施策にしっかりと着実に取り組んで行ける予算に仕上げた」と説明している。

 西日本豪雨での甚大な被害は多くの国民の記憶に新しい。当然その復興に当てられる経費が大きなウェイトをしめることは理解できる。だが、この会見でも記者から財源調整基金から89億円取り崩しがある点、県債残高が過去最多になる点など、知事の「積極財政」を懸念する声も上がっていた。そうした疑問に対し、湯崎知事は次のように回答していた。

「災害という突発事項が起きたということが、非常に大きく影響している、(中略)非常事態が起きても、財政運営が破綻しないように平時から、財政のマネジメントを行ってきた。事業の休廃止を含めて事業の優先順位付けをきちんと行い、費用対効果を検証する。これを一層徹底していくということによって資源配分の最適化ということに取り組んでいきたいと思っている。これまでも人件費、特に職員の定員をコントロールしていくというところで、これを最適化し、県税の徴収強化といった形の歳入側の努力もしている。県債発行額をしっかりとマネジメントしていく」

 だが、豪雨災害の復興や今回の新型コロナウイルス感染症にかかる各種対策で県職員は相当な労力を払ってきたはずだ。財源がないからといって、その解決策として職員の一律給付金を財源に充てることは適切なのだろうか。

総務省「個人への給付」自治労「対応を協議」

 総務省特別定額給付金室の担当者は「今回の給付金は、あくまで家計の支援を目的とした個人への給付です。確かに支給された後に各個人の判断でどのように使うかに関しての規定はありません。だからといって、あらかじめ給付の行く先を県の基金などに規定してしまうのは制度の主旨にそぐわないと考えています」と説明する。

 今回の知事の発言に対して、広島県職員は次のように話す。

「県職員であるのと同時に、我々も税金を払っている県民であり国民なのですが…。緊縮財政の人手不足の中、豪雨の復興に関しては部局に関わらず県職員一丸となって取り組んできましたし、今回の新型コロナ問題でも医政部局や保健部局の同僚は毎日深夜まで働いています。コロナで大変な事業者さんは多く、少しでも役に立ちたい気持ちはあるのですが少し腑に落ちません。

 知事の発言を見る限り、強制ではないのでしょうがあのように発言すれば自分だけ県の基金に寄付しないということはできそうにありません。一種のパワハラ、モラハラみたいなものです」

 広島の例を皮切りに、全国の自治体や事業者にもこうした動きが広まる可能性がある。全日本自治団体労働組合(自治労)広島県本部の担当者は「これから関係機関と本件に関して協議をし、対応を検討していく予定です」と語った。

 少なくとも自発的でない「寄付」などあるのだろうか。東日本大震災、熊本地震、西日本豪雨……どこの被災自治体も限られた財源で懸命に自治体を運営している。

「みんながハッピーになります、みたいなことはない」

 湯崎知事自身が発言した通り、安易な解決策には慎重になるべきではないのか。

(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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