NEW
藤和彦「日本と世界の先を読む」

原油、大余剰で“お金を払って処分”の動き…「石油の時代」の終焉、中東で大惨事の前兆

文=藤和彦/経済産業研究所上席研究員
【この記事のキーワード】, ,

世界の原油需要、すでにピークを過ぎたのか

 石油の長期的な見通しについても変化が生じることが予想される。国際エネルギー機関(IEA)は「世界の原油需要は2030年代にピークを迎える」としているが、OECD諸国の原油需要に限っていえば2006年にすでにピークを打っている。

 その後、中国の「爆食経済」のおかげで世界の原油需要は増加してきたが、新型コロナウイルスのパンデミックの収束後に世界の原油需要が以前の水準(日量約1億バレル)に戻る保証はない。世界各地の企業が緊急避難的に導入した在宅勤務やサプライチェーン(部品供給網)の縮小の動きが続く可能性が高いからである。

 欧米ではかねてから気候変動問題への関心から「石油離れ」の動きが強まっている。私たちが気づかないうちに世界の原油需要はピークを過ぎてしまい、すでに「ポスト石油」時代が到来しているのかもしれないのである。

勢力を盛り返しているのはイスラム国

 長らく世界の檜舞台に立っていた原油だが、その引き際に大きな混乱が起こるのではないだろうか。世界の大産油地帯である中東地域の地政学リスクが一気に顕在化する可能性が高いからである。中東諸国は原油安に加えて新型コロナウイルスの感染拡大の対応に翻弄されているが、これを尻目に勢力を盛り返しているのはイスラム国である。

 そのイスラム国の勢力が16日、チュニジアで新型コロナウイルスを悪用したテロを開始した。チュニジア政府によれば、新型コロナウイルスに感染した疑いのある実行犯を治安部隊に侵入させ、ウイルスを蔓延させるという新種のテロを企んでいた。テロは未然に防止されたものの、イスラム国がウイルスの感染者を多数テロリストに仕立て、中東全域で反転攻勢に出るのは時間の問題である。

 イスラム国がターゲットとするのは、イラク(OPEC第2位の生産国、日量約480万バレル)だろう。イスラム国の拠点の一つだったイラクは、昨年10月から無政府状態が続いており、直近の原油価格急落で最も大きな打撃を蒙った国の一つである。公衆衛生レベルは悪化の一途を辿っており、イスラム国の新型コロナウイルスを用いたテロ攻撃の最適の地といっても過言ではない。

 このように、原油価格がマイナスになったという事実は、今後世界に起きるかもしれない大惨事の前兆かもしれないのである。

(文=藤和彦/経済産業研究所上席研究員)

情報提供はこちら

RANKING

5:30更新
  • 連載
  • ビジネス
  • 総合