垣田達哉「もうダマされない」

東京・小池知事、再び“買い占め”を誘発する発言…「スーパー入場制限」示唆で客殺到の懸念

新型ウイルス肺炎が世界で流行 小池都知事が会見(写真:日刊スポーツ/アフロ)

 小池百合子東京都知事が、また消費者の買い溜め行為を煽る発言をした。22日配信の毎日新聞記事は、次のように報じている。

<東京都の小池百合子知事は22日午前、各地のスーパーで混雑が生じている問題について、入店規制などの対応策を検討していることを明らかにした。報道陣の取材に「スーパーは大変『密』な状況になっている。入店を何人までにするとか、お待ちになる方の間とか、早急に検討しているところです」と述べた>

 小池知事が記者会見で「ロックダウン(都市封鎖)」という言葉を発したことがきっかけで、消費者の買い溜め行動が起きたといわれている。法的にはロックダウンができないことがわかっているのに、あえて消費者に危機感を煽るために「ロックダウン」と言った。消費者は「ロックダウンができないまでも、最大限の権力を使ってロックダウンに近いことをするに違いない」と感じ、「まずは食べものがなければ生きていけない」と思い買い溜め行動に走った。

 そんな状況のなかで、今度は「スーパーでの入場制限」という話が出た。東京都の世帯数は約730万世帯、23区で524万世帯ある。例えば、世帯に1人という制限をすると、23区で524万人がスーパーの入り口で並ぶことになる。

 一般社団法人全国スーパーマーケット協会が運用するサイト「統計・データでみるスーパーマーケット」によれば、東京都の食品スーパーと総合スーパーの合計は2789店舗となっている。「買い溜めはするな! 必要な分だけ買え」と言われているので、毎日買い物に出かけるとすると、都内が2000店舗の場合、1店舗当たり平均で2620人が並ぶことになる。2割の世帯が宅配等で食品を購入するとしても、1店舗当たり2096人が並ぶことになる。これが、1週間に1度の買い物なら、7分の1になるので、1日当たり約299人。1週間に2度なら1日当たり1048人となる。

 しかし、これはあくまで単純計算であり、普段でも混む店と空いている店があるように、入場制限や買い物点数制限となれば、買い物客が殺到する店が出てくる。開店時間前の早朝から大行列ができる店舗も出てくるだろう。

 しかも1世帯1人という制限が付けられると、1人で運べる量は限られてくる。個数制限されれば、夫婦が分かれて並ばないと必要数が手に入らなくなるので、行列はもっと伸びる。そこに1店舗1000点限りという制限まで付けられると「整理券をもらうための行列」や「前日の夜からの泊まり込み行列だ」ということが起きるかもしれない。

生活をどこまで犠牲にすればよいのか

 トイレットペーパーやマスクはなくても生きていけるが、食料品はなくては生きていけない。並ぶことができなかった消費者は、スーパー以外のところ(まさに闇市)で高額な食料品を買わなくてはいけなくなる。3月27日付本連載記事でも述べたが、まさに「戦時下」の日本に近づいてくる。

 消費者は、そんなことは耐えられないと、スーパーでの入場制限前にスーパーを何軒もはしごして、今度は思いっきり買い溜めをするだろう。

 そもそも、なぜスーパーの入場制限やソーシャルディスタンスをするのかというと、単に「人が大勢いる」からだ。今回のコロナ騒動の根本的原因は、この非科学的な思惑に行政が取りつかれていることだ。折しも22日には「濃厚接触者の定義」が「発症の2日前から1メートル以内で15分以上接触した人」に変更された。

 そもそも、満員電車やスーパーのレジは「3密」に該当するのだろうか。例外はあるにしても、満員電車でもスーパーでも、まず他人と話はしない。特にスーパーは、満員電車のように他人と接触することもほとんどない。満員電車やスーパーで感染するのであれば、もう感染爆発しているだろう。

 政府が国民に要請している「8割の接触」とは何を意味するのかも説明がない。感染するのは、飛沫や接触ではなかったのか。いつのまにか、行政や専門家は「マスクをしていても感染する。すれ違っただけでも感染する」という風潮になるよう国民を誘導しているのではないだろうか。なぜなら、終息した時に「感染が拡大したのは、国民が国の言うことを聞かなかったからだ」と、すべてを国民の責任にしたいからではないだろうか。

 専門家会議も行政も、科学的な話はほとんどしないで、とにかく国民に対し危機を煽りまくる。規制すれば、感染者はある程度少なくなることは誰でもわかるが、それ以上に今必要なことは、PCR検査を増やす体制をつくって、感染者を見つけ出し隔離することだ。院内感染が増えているのは、医療従事者や患者の検査をしてこなかったからだ。いつまでたっても、クラスターの濃厚接触者だけしか検査しないのであれば、終息まで何年かかるかわからない。その間、国民はいったいどこまで生活を犠牲にすればいいのだろうか。

 生活をどこまで犠牲にするかを、行政が正しく判断しなければ、コロナの前に生活が破たんする世帯がどんどん増えていく。そこをコントロールするのが、政治の役目だ。

 この連載で何度も指摘しているが、「東京圏の3600万人の胃袋を満たす」ことは容易なことではない。食料品の規制をすればするほど、買い溜め、横流し、転売などが横行し、食料危機を招きやすくなる。それが、首都圏から地方にすぐに移っていく。マスクを見ればわかるように、食料品が手に入りにくくなれば、販売価格がどんどん上昇し、ますます庶民には手が届かない存在になる。

 自給率が37%の日本は、多くの食を輸入に頼っている。買い占めが起きて在庫がなくなったからといって、すぐに輸入量を増やせるわけではない。世界のどの先進国より、食料不足を招きやすいのが日本だ。

 しかも、一極集中している首都圏は、実に微妙なバランスで食料が供給されている。そのバランスを崩すようなことがあれば、簡単に食料危機が起こる。食料品や販売の規制をするならば、少なくとも現場をよく知っている流通、物流、生産、製造の各団体に相談をするべきである。

(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表)

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

1953年岐阜市生まれ。77年慶應義塾大学商学部卒業。食品問題のプロフェッショナル。放射能汚染、中国食品、O157、鳥インフルエンザ問題などの食の安全や、食育、食品表示問題の第一人者として、テレビ、新聞、雑誌、講演などで活躍する。『ビートたけしのTVタックル』『世界一受けたい授業』『クローズアップ現代』など、テレビでもおなじみの食の安全の探求者。新刊『面白いほどよくわかる「食品表示」』(商業界)、『選ぶならこっち!』(WAVE出版)、『買ってはいけない4~7』(金曜日)など著書多数。

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