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コロナ緊急経済対策、財務省が“出し渋り”…休業補償の財源は簡単に捻出できる

文=高橋洋一/政策工房代表取締役会長、嘉悦大学教授
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麻生太郎財務相(写真:日刊現代/アフロ)

 4月7日に緊急事態宣言が7都府県に発出され、同時に108兆円規模の緊急経済対策も発表された。

 緊急事態宣言は遅れた。新型インフルエンザ等対策特別措置法の一部を改正する法律の施行日(3月14日)に、国が緊急事態宣言を発出していてもよかった。というのは、3月16日には政府は東京と大阪で感染者数急増となる兆候をつかんでいた。東京でさくら開花宣言が出されたのが3月14日だが、その花見気分で3連休前に自粛ムードが緩んでおり、その時に宣言が出されていたら、緩みが締め直され今のような感染者数急増にならなかった可能性もある。

 しかも、緊急事態宣言の遅れが、経済対策の遅れともパラレルになっている。緊縮病に罹った財務省らが主導して政府の経済対策を渋り、休業補償などでカネのかかりうる緊急事態宣言を出し渋ったというのが実態だろう。

 まず、事業費は108兆円、GDPの2割といわれるが、事業費とGDPは売上高と利益ほどの概念の違いがある。重要なのはGDP押し上げ効果のある「真水」だが、筆者のみるところ、真水は17兆円程度だ。この程度の真水であると、GDP比3%程度でしかなく、今回のコロナショックには力不足になる。

 そこで政府は17日、緊急事態宣言を7都府県から全国に拡大し、同時に所得制限つきの一世帯30万円給付案(以下、30万円案)をひっくり返して、所得制限なしの一律10万円給付案(以下、10万円案)となった。こうした非常事態では、簡素でスピーディな制度のほうが望ましいので、はじめから10万円案のほうがよかった。もともと、安倍晋三首相や公明党の山口那津男代表は10万円案派であったが、麻生太郎財務相と岸田文雄政調会長、財務省の30万円案に押されたものの、元の鞘に収まった。

 30万円案では必要となる国費は4兆円であるが、10万円案なら12兆円になる。これでいわゆる「真水」は25兆円程度になる。マクロ経済効果としては、このほうが大きく、最近のIMF経済見通しによれば大恐慌以来といわれるコロナショック対策として望ましい。

休業補償は財政負担なしで実現可能

 コロナショックが収まるまで経済活動は縮小するだろうから、10万円給付は今回だけではなく、2回の実施も有効である。このほか、中小企業向けの持続化給付金、一般企業向けの雇用調整助成金、失業者向けの雇用保険給付などもあるが、消費を戻すためにはその前に消費減税が必要だ。

 また、休業補償が争点となっている。休業要請に伴う補償については東京都が独自に行う方針だが、国は実施に消極的だ。事業が厳しくなると、事業主は経費を減らそうとする。このとき、人件費にまで手を付けると、休業や解雇にもなる。解雇の場合、労働者には失業保険が手当され、休業の場合には事業主には手当に要した費用が雇用調整助成金として支給される。ともに雇用を守るためのセーフティーネットだ。どちらも不正受給はいけないが、法律に基づくものは大いに活用しよう。

 休業補償すると、国はどれくらいの金額が必要となるのか。大雑把な計算であるが、仮に補償期間を3カ月として、経費率8割とすれば、経費すべてを補償する場合、10兆円程度だ。この程度であれば、国債を発行し日銀が買いオペ対象にするだけで、インフレを起こすこともなく、簡単に捻出できる。何しろ日銀は国債を80兆円ベースで買い取るとしているが、実績は20兆円程度で、まだ買入余力は60兆円程度もある。しかも通貨発行益なので、財政負担はない。

 一方、地方公共団体には通貨発行益という奥の手はない。財政余裕度を示す財政調整基金(2018年度末)について、東京都は8428億円だが、大阪府1489億円、神奈川591億円という状況で、兆円を超す支出を地方公共団体に求めることはできない。

 コロナウイルスに対しては、人と人との接触率を減らすのが当面の課題だ。早く打ち勝つためにもカネをケチってはいけない。国民の命を守るのは国の責務だ。

(文=高橋洋一/政策工房代表取締役会長、嘉悦大学教授)

高橋洋一/政策工房代表取締役会長、嘉悦大学教授

高橋洋一/政策工房代表取締役会長、嘉悦大学教授

1955年、東京生まれ。80年、大蔵省(現財務省)入省、理財局資金企画室長、内閣参事官など歴任。小泉内閣、安倍内閣では「改革の司令塔」として活躍。07年には財務省が隠す「埋蔵金」を公表、08年に山本七平賞受賞。政策シンクタンク「政策工房」会長、嘉悦大学教授。
株式会社政策工房

Twitter:@YoichiTakahashi

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