上氏が指摘する「新型コロナウイルス(Novel Coronavirus:nCoV)に対する積極的疫学調査実施要領(2020年2月6日暫定版)」には以下のように記されている。

「ちなみに、帰国者・接触者相談センターへ相談する者の目安は 2 月 17 日時点では以下のとおりである。

1) 風邪の症状や 37.5 度以上の発熱が4日以上続く者(解熱剤を服用中の者も同様に扱う。)

2) 倦怠感や息苦しさがある者

3) 重症化リスクが高い者(高齢者、糖尿病・心不全・呼吸器疾患の基礎疾患がある方や透析を受けている者、免疫抑制剤や抗がん剤等を用いている者)が 1)、2)が 2 日程度続く場合」

 いったい、この文言のどこに釜萢委員が言及したような意味をくみ取る余地があったのだろうか。上氏はあらためて、一連の政府の対策に対して次のように苦言を呈する。

「一連の問題の端緒は、政府が1月28日に公布した『新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定める等の政令』までさかのぼります。政令作成にあたって厚生労働省の医療技官らはよくこの病気を理解することなく、コレラやペストのように『1日で発症するタイプの感染症』と同じ事例に落とし込むかたちで作成しました。コレラなどは感染源と感染ルートが明確な感染症なので、感染拡大防止にクラスターの特定は大きな威力を発揮するのですが、新型コロナウイルスとは根本的に違います。その結果、症状の重さにかかわらず、感染者を病院に隔離して収容することが法律で規定されてしまったのです。

 無症状患者が感染を広げる可能性の指摘が、1月の段階で医学雑誌『ランセット』に投稿されていたのにもかかわらず、です。この結果、PCR検査の対象を拡大すれば、病院が無症状患者も含めてすべて収容せざるを得なくなり、医療崩壊が確実視されることとなりました。それに加えて、感染研や大学病院などが疫学的な調査データの統一性などを主張しPCR検査の処理を独占しました。そのため検査対象は広まらず、在宅で感染者が死亡する事態が発生してしまったのです。

 結局、今回の釜萢氏の発言もさることながら、厚生労働省、医師会、感染研という専門家会議を構成する各主体が、それぞれのメンツや小さな利権を守ろうとする『ムラ社会』の論理をもとに、行き当たりばったりで一連の対策を行ってきたつけがここにきて噴出し始めているのだと思います。

 東京五輪の延期が正式に決定し、世論が厳しくなってきたため、PCR検査の拡大を3月下旬から始め、統計上感染者が増えました。この結果をもとに専門家会議は感染爆発の危険性を訴えていますが、そもそも感染のピークは2月や3月に来ていた可能性があります。政府や専門家会議はここにきて『接触8割削減の徹底』などを呼びかけていますが、感染者数の増加をあたかも国民の行動のせいにするかのような言動はいかがなものかと思います」

(文=編集部)

 

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