テスラ事業は赤字を垂れ流し

津賀氏は「家電の会社」からの転換をはかるべく、BtoB(企業間取引)事業へのシフトを掲げ、自動車分野に経営資源を集中した。その象徴が電気自動車(EV)メーカー、米テスラとの提携だ。10年、パナソニックはテスラに3000万ドルを出資。両社は14年、米ネバダ州に車載電池工場を設けることで合意。共同運営する電池工場、ギガファクトリー1に両社合わせて5500億円をつぎこんだ。パナソニックは2000億円以上の巨額投資をしたことになる。

 両社は16年、太陽光発電の分野で提携を発表。パナソニックは17年からテスラが米ニューヨーク州バッファロー市につくった工場で太陽電池や太陽光パネルの生産を始めたが、両社の関係が良好だったのはここまでだった。

 車載電池はテスラが18年に出荷が本格化した主力EV「モデル3」向けだが、量産の立ち上げにコストが膨らみ黒字化が遅れた。パナソニックは大阪府の工場でも「モデル3」以外の車種の電池を生産しているが、テスラ向けの車載電池事業は赤字だ。

 喫緊の課題はテスラ事業の黒字化だった。パナソニックの元副社長で17年秋にテスラに移籍した山田喜彦氏が両社の橋渡し役となっていたが、19年7月、山田氏はテスラを去った。そこで、津賀氏自身が渡米し、テスラの創業者イーロン・マスクCEOと直接向き合うようになった。それでも電池の価格交渉は難航した。テスラが値上げを呑むわけがない。交渉は決裂した。

 19年10月23日、テスラは中国・上海に建設した工場(ギガファクトリー3)でEVの試験生産を始めた。車載用電池を供給するのはパナソニックではなく韓国LG化学だった。テスラはパナソニックから韓国LG化学に乗り換えた。さらに20年2月、中国のCATL(寧徳時代新能源科技)がテスラとバッテリー供給契約を結んだ。パナソニックとテスラの関係は完全に冷え切った。

 CATLは19年7月、トヨタ自動車と新エネルギー車(NEV)用電池に関する包括的なパートナーシップを締結している。ニュースリリースに「CATLは、グローバルで優位性のある駆動用電池システムの世界トップのサプライヤー」と書かれている。

 パナソニックは20年2月26日、米テスラとの共同生産を停止すると発表した。バッファロー工場で太陽光パネルの中核部材である太陽電池を生産してきたが、5月に生産を停止し9月末に撤退する。今後、国内外の関連工場の閉鎖や売却を進める。設備を廃棄すれば巨額の損失が発生する。

 パナソニックは3月23日以降、新型コロナウイルスの感染拡大を理由にギガファクトリー1で受け持つ電池の生産を休止。テスラも3月23日からカリフォルニアの完成車の組み立て工場を一時休止した。電池工場、ギガファクトリー1は漂流を始めたように映る。

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