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新型コロナで受刑者を釈放?逮捕を猶予?刑事法運用に例外措置はあるか【沖田臥竜コラム】

文=沖田臥竜/作家
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緊急事態宣言後に出された収監の連絡

 現在、どの刑務所からもこんな声が聞こえてきている。新型コロナウイルスの感染拡大のため、受刑者の一部を一時的に釈放してもいいのではないか、というものだ。

 実際、米国や中東などでは、数千〜数万の囚人を釈放したり、自宅で服役させたりするという措置が取られていることもある。だがそれらのケースは、すでに刑務所内でクラスターが発生するなど爆発的感染のリスクが高まっているという事情を汲んでのことで、日本の現状では、突然、何百人もの受刑者が社会へと解放されることはないだろう。日本の司法制度は、いったん受刑者の身体を拘束すれば、あらかじめ決められたスケジュールに沿うことが原則であり、突然釈放されるようなことなどまずない。

 ただし、新型コロナ問題が刑事施設に対して影響を及ぼしていないかといえば、そんなことはない。東京拘置所大阪拘置所では、刑務官や収容者が新型コロナに感染するケースが出ており、結果、収容者への面会や差し入れに制限がかかる事態となっている。

「現在、全国の刑務所や拘置所では、原則として、収容者との面会はたとえ親族であってもできません。郵送以外での差し入れもできない。弁護人との面会は可能ですが、面会室の仕切り用のアクリル板の空気穴を防ぐなどして、感染防止の対応策が施されています。また、裁判所においても、法廷と傍聴席を間切りしたり、着席できる席を減らしたりするなどして、人々が密着などをしないように工夫された上で公判が進められています」(法律に詳しい専門家)

 一方で、受刑者を釈放するという措置にまでは至らないものの、新型コロナ感染拡大中に刑事施設への収容者を増やさないために、係争中の刑事裁判において判決を保留することで、実刑者を当面出さないようにするとか、比較的軽い犯罪に対しては、それを見逃したり、あえて身柄を拘束しなかったりといった措置が取られるのではないかと噂されたことがあった。

 だが、実際はそんなことはないようだ。現在、空き巣などの被害が多発しているなかで、街中には大勢の警察官が派遣されて、警戒にあたっている。外出自粛で人手が減った街中での当局の警戒は、いつも以上に強まっているともいえるだろう。もちろん、犯人を発見したのに見逃したり、身柄拘束後に即釈放したりすることはない。裁判所においても、コロナの影響で公判期日が変更になることはあっても、意図的に判決が保留されているということはないようだ。

 刑務所への収監や移送についても同様である。保釈されている被告人が実刑判決を受けても、緊急事態宣言期間中は収監されることはないと思われていた。だが、受刑生活に耐え得るかどうか、体調に問題がないかを受刑者本人に確認するだけで、現在も粛々と収監が行われているのだ。


「刑務所や拘置所は、仮に感染者が発生しても、すぐに隔離することのできる状態が日頃から整っている。ゼロではないが、爆発的感染が施設内で起こるリスクは、受刑者の釈放を実施した海外の施設に比べて圧倒的に低い。司法当局も刑事施設の運営や刑事法の運用に支障を来すことがないよう心掛けているわけだ。逆にこのような国難の際に犯罪などを犯せば、平時よりもさらに重い処罰を受ける可能性はあるのではないか」(捜査関係者)

 こうした言葉もある中、仮にもし刑事施設の運営や刑事法の運用にまで影響が出てくるような事態になるとすれば、それは今よりもなお、コロナ問題が社会全体で深刻化していることを意味する。想像したくもない未来である。

(文=沖田臥竜/作家)

沖田臥竜/作家

沖田臥竜/作家

作家。2014年、アウトローだった自らの経験をもとに物書きとして活動を始め、小説やノンフィクションなど多数の作品を発表。小説『ムショぼけ』(小学館)や小説『インフォーマ』(サイゾー文芸部)はドラマ化もされ話題に。最新刊は『インフォーマ2 ヒット・アンド・アウェイ』(同)。調査やコンサルティングを行う企業の経営者の顔を持つ。

Twitter:@pinlkiai

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