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小笠原泰「日本は大丈夫か?」

日本、コロナ死亡者の突出した少なさ、「親子関係の希薄化」と「老人世帯の孤立」が原因か

文=小笠原泰/明治大学国際日本学部教授
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 実際、多くの死者に苦しむイタリアは、日本に次ぐ世界第2の高齢社会の国であるが、世界の先頭を走る超高齢社会の日本で、なぜ感染者に占める高齢者の比率が低いのか。

物理的に隔離されている日本の高齢者世帯

 筆者は、その理由として下記の要因があるのではと考えている。

 ひとつ目は、高齢者の世帯構造をみると独居と老夫婦住まいが6割を占めており、これに親と未婚の子のみの世帯が2割ある。2世代や3世代世帯は2割しかない。高齢世帯の孤立は問題視されて久しい。裏を返せば、これは高齢者世帯が物理的に隔離されていることを意味する。

 ただし、親子関係次第で、親子が別々に暮らす物理的隔離は必ずしも高齢者をコロナ感染から隔離することを意味しない。欧米では親子は別々に暮らすことが多いが、ラテン系南欧州では、北欧州に比して同居もするが、別居していても親子関係は濃密で、毎週親子や親せきで集まることは一般的である。この親密な親子関係が災いしたのがイタリアやスペインであろう。

 欧州4カ国での居住経験のある筆者からみると、北欧州では子供は早くから独立し高齢の親とは同居せず、加えて親子関係は南欧州のような濃密なビッグファミリー的な印象をうけない。これが、ドイツでの感染者における高齢者の比率の低さをもたらしているのではないか。

 それでは、日本はどうであろうか。世界でも稀有な「オレオレ詐欺」がまかり通ることでもわかるように、日本の親子関係は歪んでおり希薄化しているといえる。皮肉であるが、この親子関係の希薄化と老人世帯の孤立が、高齢者をコロナ感染から隔離したと考えることはあながち外れてはいないであろう。

 次に考えられる要因は、介護保険ともかかわる高齢者用の施設である。主たる施設の収容規模は現在、介護老人福祉施設(特養)が61万床、有料老人ホーム(介護付きを含む)が52万床、介護老人保健施設(老健)が37万床、サービス付き高齢者住宅(サ高住)が24万床、グループホームが21万床と総数で約190万床である。これに軽費老人ホーム、養護老人ホーム、介護療養型医療施設を加えると215万床となる。これは、要介護3以上の要介護認定者数の225万人と人数的にはバランスする。

 日本の80歳を超えた高齢者のコロナでの致死率は20%程度であるが、より深く見てみると、介護現場の感覚では、特養をはじめとする高齢者施設には、80歳以上のより虚弱な高齢者が多く集まっており、もしこうした高齢者が感染した場合の致死率は50%ではないかといわれている。この致死率で、コロナが虚弱高齢者を襲えば、死者数はあっという間に増加する。

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