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小笠原泰「日本は大丈夫か?」

日本、コロナ死亡者の突出した少なさ、「親子関係の希薄化」と「老人世帯の孤立」が原因か

文=小笠原泰/明治大学国際日本学部教授
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 しかし、現実はそうなっていない。つまり、介護施設が虚弱高齢者のコロナ感染への防壁となっているということである。メディアで病院などのクラスター化が報道されるが、高齢者施設がクラスター化しているという報道は現在極めて少ない。高齢者はインフルエンザなどから肺炎になり亡くなることも多く(毎年約10万人が肺炎で亡くなる)、2009年の新型インフルエンザの流行以来、介護施設での防疫体制はかなり徹底されてきた。これは施設だけではなく、在宅訪問介護でも同様である。それが今回のコロナ蔓延でも、死者を増やさないために重要な役割を果たしたのではないかと思う。

後期高齢者の6割、コロナ感染の低い地域に居住

 最後に、高齢者の居住分布を見てみよう。後期高齢者の6割は、最初に緊急事態宣言の出た7都府県以外の比較的にコロナ感染の低い地域(僻地に残る高齢者も多い)に居住している。また、コロナ感染の高い東京などの大都市に介護施設が集中していることも、死亡者の抑制に寄与したと思われる。

 このように見てくると、日本において死亡者が少ないのは、政権の対応とは関係がなく、皮肉にも政権が問題視する高齢世帯の孤立と親子関係の希薄化、多くの高齢者が過疎化する地方にとどまっていること、そして、特に高齢者施設で働くスタッフの意識の高さと献身によって高齢者はコロナから守られていることが要因だといえよう。

 ゆえに死亡者の少なさは、政権の対応のお陰ではない。事実、日本政府は欧米のように早期から高齢者に対して強く外出を控えるようにという明確なメッセージを出していない。

 現在、コロナ感染は東京を筆頭とする大都市圏から、地方に移りつつあるようにみえる。高齢者の6割は地方にいるので、今後のコロナの地方への伝播次第では、死亡者が急激に増えないともいえない。

 また、現在、「コロナ患者の在宅看取りは行われていないはず」ということになっているが、家族が納得し、ひそかにコロナ患者の在宅看取りが行われている可能性はあるだろう。重度介護者が施設や自宅でコロナ感染による肺炎で亡くなっても、死後の検査を徹底して行うこともないだろうから、現在同様にコロナでの死者数には含まれない可能性も指摘されている。専門家が肺のCTを見ればコロナ由来のウイルス性肺炎はわかるというが、年間10万人が肺炎で亡くなることを考えると、すべての肺炎死亡者のコロナ感染判別は現実的ではないだろう。

 しかし、コロナ感染の蔓延防止の観点からすれば、在宅や施設での看取りを、きちんと考慮する必要が今後強まるのではないであろうか。

 日本は、まさに薄氷を踏む状況である。

(文=小笠原泰/明治大学国際日本学部教授)

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