要するに農地も農業就業者も縮小するが、農産物は増産できるという能天気な予想に基づいて、食料自給率が10年後に45%になるという、まったく根拠のない想定なのである。IT技術を活用するスマート農業によってそれを可能にするとしているが、高齢化している農業従事者でスマート農業を活用できる人は限られている。

 さらに、日本農業を取り巻く環境は、メガ食料輸入自由化で野菜も果実も関税撤廃され、肉類や乳製品も関税の低減が連続的に進むことになり、圧倒的価格差のある輸入農産物の輸入拡大による農産物価格の下落で、農業経営の継続が困難になる事態を迎えている。

 このような実現不可能な食料自給率目標を掲げて国民に誤った安心感を与えることはやめて、目前に展開しつつある食糧危機に真正面から対峙して、食料確保や、離農と高齢化が進む農業の緊急的なテコ入れに取り組むべきである。

(文=小倉正行/フリーライター)

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