ビジネスパーソン向け人気連載|ビジネスジャーナル/Business Journal
そういう手法が功を奏するのか、霊能師や占い師に心酔する芸能人が少なくないように見受けられる。その一因として、人気という目に見えないあやふやなものを頼りにする職業であり、浮き沈みが激しいため、普通の人には見えないものが見えると主張する人を人一倍信じやすいことがあるのではないか。
不安を精神医学の知見によって解決するはずの精神科医のなかにも、霊能師や占い師にすがる方がいる。たとえば、以前新聞で対談した春日武彦氏は、「誰も自分に執筆依頼なんかしてこなくなるのではないかといった暗い想像」が働き、「不安感と不全感と迷い」に精神を覆い尽くされた状態に陥ったため、計5回、5人の占い師を訪ねたという(『鬱屈精神科医、占いにすがる』)。春日氏は、お祓いまで試みたらしい(『鬱屈精神科医、お祓いを試みる』)。
また、最近、知り合いの精神科の開業医に久しぶりに会い、「今、開業医の間で何が話題になっているのか」と尋ねたら、「どの占い師が当たるか」という答えが返ってきた。新型コロナウイルスの感染拡大のせいで、医療機関での感染リスクを恐れて外来受診を控える患者が増えており、診療所では平均して2~3割、多いところでは4割程度患者が減っている。この状態が続くと、やがて経営破綻する診療所が出てくるのではないかと危惧する声もあり、こうした状況が影響しているのかもしれない。
いつまで休業や外出自粛が続くのかわからず、みな先が見えない不安を抱えている。そのため、霊能師や占い師に頼る人は今後ますます増えるのではないだろうか。
(文=片田珠美/精神科医)
参考文献
春日武彦『鬱屈精神科医、占いにすがる』太田出版 2015年
春日武彦『鬱屈精神科医、お祓いを試みる』太田出版 2017年