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失業手当、もらえる額が段違いに増える!辞める際にするべきこと&NG行為

文=日向咲嗣/ジャーナリスト
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「Getty Images」より

「この3月末で、勤務していたビル管理会社を雇い止めされました。理由は『取引先と同僚に対する高圧的な言動、上司の指揮命令に対する不服従等により職場の秩序を著しく混乱させたこと等』と書かれていました。すべてウソ八百で、私のほうがパワハラの被害者なんですが」

 そう憤懣やるかたない内容のメールを筆者にくれたのは?さん(40代男性・仮名)。彼が契約社員として勤務していたのは、大手鉄道会社のグループ企業で、勤務場所は首都圏の国立大学。だが、詳細を聞くと、まるでブラック企業のような法令無視の対応に驚かされる。

 新型コロナウイルス感染拡大による経済への影響が日に日に深刻になりつつあるなか、ここへきて、その混乱に乗じたかのような解雇や雇い止めも目立っている。

 今回は、そんなときに役立つ雇用保険の活用方法について解説しておきたい。

 退職を余儀なくされそうになったとき、まず頭に入れておきたいのは、退職して雇用保険を受給する前に、ひとりで加入できる社外の労働組合(=ユニオン)に相談することである。

 個人で会社に抗議しても埒があかないが、ユニオンに加入して団体交渉を申し入れすれば、会社側は拒否できない。そのため、雇用継続はもちろん、退職金の上積みなど一定の条件を引き出せる可能性も決して低くない。交渉の場で会社側に不法行為の証拠を突きつければ、有利に交渉を進めることもできる。「とてもそんなことしてる余裕ない」と引き下がるのは、雇用主の思うツボで、あまりにももったいない。

 本筋としては、雇用保険を受給しながら転職活動を進めていくべきだが、それと並行して勤務先に雇用継続を求めるべきだろう。

 雇用継続を求めて勤務先と団体交渉→退職(雇い止め、自主退職など)→雇用保険受給しながら転職活動→勤務先と和解(職場復帰または解決金受領)といった具合に、転職活動と団体交渉を同時に進めていくのが賢明である。

 雇用保険から失業手当を受給するにあたっての鉄則は、「会社都合」にトコトンこだわることに尽きる。なぜならば、自己都合による退職と会社都合による退職とでは、給付条件が天と地ほども差があるからだ。

 たとえば、自己都合では、退職前2年間に1年(12カ月)以上雇用保険に加入していないと失業手当の受給資格を得られないが、会社都合なら、退職前1年間に半年(6カ月)以上加入していれば、受給資格を得られる。

 また、自己都合退職者は受給手続き後、2カ月(今年3月31日までの退職者は3ケ月)の給付制限を課せられるが、会社都合なら受給手続き後、7日を経てすぐに支給対象となる。

 給付される日数面でも、両者の差は大きい。45歳以上1年以上勤務の場合、自己都合では90日しか失業手当をもらえないが、これが会社都合になったとたん給付日数は180日と倍増。日額7000円(在職中の5~8割)とすると、63万円もの差が出るのだ。

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『失業保険150%トコトン活用術』(同文舘出版)より

離職票に「自己都合」と記載されていても「会社都合」にできる!

 しかし、現実には、退職後に勤務していた会社が発行する離職票では、実質的に会社都合でも自己都合扱いにされているケースが、驚くほど多い。業績不振で肩たたきに応じたら「転職希望」と、事実と異なる内容が書かれていたなんてことも日常茶飯事だ。

 そんなときももちろん、あきらめる必要はない。ハローワーク(以下、ハロワ)で失業手当の受給手続きをする際に、異義を申し立てれば、その扱いが覆ることも珍しくない。

 下の表に記載されているどれかの要件がひとつでもあてはまっていれば、たとえ離職票では「自己都合」扱いになっていても、ハロワで「会社都合」と判定される可能性大だ。

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『失業保険150%トコトン活用術』(同文舘出版)より

 たとえば「事業主から直接、若しくは間接に退職勧奨を受けた」ケース。解雇通告はされていないが、やんわりと「辞めてくれないか」と言われて渋々、それに従ったというようなケースなら、文句なく会社都合になる。そのほか、契約書の条件と実際の勤務条件が異なっていた、給与のたび重なる遅配、不当な配転、職場いじめなども、会社都合と認定されるケースである。

 ただし、いずれもハロワで「証拠」の提示を求められることがネックとなっていて、職場いじめなどは、「同僚の証言を文書にして提出せよ」などといわれるケースも多い。ここで注目したいのが、比較的容易に証明できる項目だ。大幅な減収や、法令で定められた基準を超えた時間外労働など、事実関係を数字で出せれば、難なく「会社都合」に判定は覆るからだ。

 たとえば「賃金が85%未満に低下した」や「3カ月連続して45時間を超える時間外労働が行われた」ようなケース。これらは、給与明細やタイムカードのコピーなどによって客観的に証明しやすい。該当する人は、退職前から用意周到に証拠を確保しておけば、「会社都合」の認定を受けるのはそんなに難しくないだろう。

 注意したいのは、冒頭で紹介したKさんのように、有期雇用の契約社員が「期間満了」で退職するようなケースだ。

 有期雇用の場合、単に「契約期間満了」というだけでは、原則として自己都合扱いになる。「あらかじめ退職時期は予期できるので、そのための準備もできたはず」という理屈だ。そのため、給付制限こそつかないものの、給付される日数は会社都合と比べると、かなり少ない。

 契約期間満了退職の場合、「労働者が契約更新を希望したにもかかわらず、会社側がそれを拒絶した」場合に、初めて会社都合となる。そこで、契約満了までに更新希望の意志を会社に伝えるか、雇い止めを通告された際に雇用継続を求める文書を会社側に提出しておくのがコツだ。まかり間違っても、自分から「辞表」や「退職願い」を出してはいけない。それが自主退職の証拠にされかねないからだ。

 冒頭で紹介したKさんも、契約満了後の4月1日にわざと出社して、責任者に抗議文を渡したという。

「副支店長ら3名が待ち構えていたので、抗議文を走り書きして渡しました」

 そうした証拠さえ確保していれば、少なくとも雇用保険上は、会社都合が認められて有利に失業手当を受給できるはずである。

 今のような非常事態においては、とにかく1日でも長く生き延びて、事態が収束するのを待つことが大事だ。そのための知恵を身につけておきたいものである。
(文=日向咲嗣/ジャーナリスト)

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日向咲嗣/ジャーナリスト

日向咲嗣/ジャーナリスト

1959年、愛媛県生まれ。大学卒業後、新聞社・編集プロダクションを経てフリーに。「転職」「独立」「失業」問題など職業生活全般をテーマに著作多数。2015年から図書館の民間委託問題についてのレポートを始め、その詳細な取材ブロセスはブログ『ほぼ月刊ツタヤ図書館』でも随時発表している。2018年「貧困ジャーナリズム賞」受賞。

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