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中西貴之「化学に恋するアピシウス」

根菜サラダで免疫力&抵抗力がアップする理由…人参はビタミンA、蓮根はビタミンCが豊富

文=中西貴之/宇部興産株式会社 品質統括部
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気候変動と食糧危機

 さて、冒頭で人類が根菜を食べるようになったのは200万年前の気候変動による寒冷化がきっかけだと紹介しましたが、私たちは再び気候変動が原因となる食糧危機の時代を迎えつつあるのかもしれません。

「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は、気候変動が原因となって干ばつや洪水が多発するようになり、食糧の供給にすでに影響が出ていることを指摘しており、このままなんの対策も打たなければ、2050年には50億人が食糧危機に陥ると予測しています。

 普段食べている野菜は、おいしく、育てやすく、収量が多くなるように交配によってつくられた、自然界には存在しなかった品種です。その結果、いずれの野菜も遺伝子の多様性はほとんどなく、温暖化が現在のように問題となる前の地球環境に最適化された、いわば人工的な植物であるため、気候が変動すると一気に絶滅してしまう恐れがあります。

 日本においても、ミカンやコメの栽培に適した地域が年々北上していることがわかっており、かつては稲作には向いていなかった北海道でも近年はコメが栽培可能になっています。

 高温乾燥に強い作物の研究も行われていますが、交配による品種改良には数年単位の時間を要し、気候の変動速度に追いついていけません。そこで、国際機関・グローバル作物多様性トラストなどは、現在は食用に供されていないけれども、過酷な環境で生育している作物の近縁野生種を探索するプロジェクトを進めています。やがては、そのような生命力の強い品種が食卓に登場することになるかもしれません。

 私たちは、200万年前、気候変動による食糧危機でやむを得ず植物の地下部分を食べることになった結果、幸運にも豊富なビタミンAを獲得して夜間の行動が可能になり、ビタミンCを獲得して免疫力を高めました。そして今、SARS(重症急性呼吸器症候群)、MERS(中東呼吸器症候群)、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)など、次々に新たな感染症が誕生する環境をどのようにして生き抜くのでしょうか。

(文=中西貴之/宇部興産株式会社 品質統括部)

【参考資料】
『マギー キッチンサイエンス -食材から食卓まで-』(共立出版/Harold McGee 著、香西みどり監訳、北山薫、北山雅彦訳)

食品成分データベース」(文部科学省)

グローバル作物多様性トラスト

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