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木下隆之「クルマ激辛定食」

キャデラック「XT5」、日本で成功する予感…驚くほど日本の道路と相性が良く、日本人好みの細工

文=木下隆之/レーシングドライバー
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キャデラック「XT5」

 米ゼネラルモーターズ(GM)の高級車ブランド・キャデラックの主力ミッドサイズSUV(スポーツ用多目的車)に、スポーツグレードが加わった。「プラチナムスポーツ」と名付けられたモデルは、内外装だけではなく走りにもスパイスが振りかけられている。

 日本では販売に苦戦を強いられているアメリカモデルだが、「XT5」が復権の鍵を握るような気がしてならない。というのも、XT5は日本に受け入れられる条件を備えているからだ。

 車格的カテゴライズに当てはめれば、DセグメントとEセグメントの中間に位置する。トヨタ自動車の高級車ブランド・レクサスの「NX」や、独アウディ「Q5」が属するのがDセグメントであり、Eセグメントには独BMW「X5」や独メルセデス「GLE」が居並ぶ。XT5はその狭間を突く。同様にDとEの中庸で成功したのがレクサス「RX」だ。堂々たる体躯を持ちながら、市街地でも取り回しやすいという絶妙なゾーンに加わるのである。日本で成功するであろう予感がするのは、それが理由だ。

 エクステリアの眺めでは押し出しの強い印象なのに、取り回しはしやすい。ボディの四隅がカットされていることで、ともすれば「アメ車=大柄」という印象を持っている人にも納得してもらえるのかもしれない。

 搭載されるエンジンはV型6気筒3.6リッター。最高出力314ps。最大トルクは368Nmである。特徴的なのは、9速という多段オートマチックミッションと合体されていることだ。低回転からトルクが得られているばかりか、変速が9段にも区切られていることで、ギアが入れ替わったことすら気が付かないほどスムーズなのである。加減速がたび重なる日本の市街地でも扱いやすい。

 静粛性も高い。ドロドロと独特のビートを響かせて加速するといったアメ車のイメージではまったくない。エンジンの存在が控えめなのだ。

 駆動方式はAWDだ。ドライブモードに「オフロード」が選択可能なほどタフな性能を秘めていながら、「ツーリング」では後輪の駆動を切り離してFFとして走ることも可能だ。経済性にも優れている。このように、“アーバンSUV”的な資質を備えている。

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 しかも、後輪はトルクスピリット型で左右の駆動トルクを可変でコントロールする。旋回性能に優れていながら、安定性が高い。外観からの印象以上に軽快にコーナリングする。ここでも、“鈍重なアメ車”というイメージが覆される。

 実は、内装関係にも日本人に受け入れやすい「もてなし」の装備が満載している。充電コードが乱雑にならないようなスマホホルダーを備え、非接触充電も可能だ。AppleCarPlayも標準で装備される。

 もちろん、バックモニターも凝ったつくりであり、前後左右をカメラで監視しているばかりか、パーキングしやすいような細工も確認できる。

 駐車場では、前から停めて前から出る――。それが広大な大地を持つアメリカの交通マナーだというのに、アメリカ育ちのXT5が、狭い市街地での取り回しや駐車事情にも気配りを見せているのが意外に思う。きめ細かい細工が行き届いているのである。

 それでも、多くの日本人が気にするのは、左ハンドルの設定しかないことだろう。GMは、日本向けの右ハンドル仕様を展開していない。個人的には、ハンドルの位置には無頓着である。左ハンドルで困る料金所の支払いは、もはやETCが代行してくれる。また、ドライバーが路肩側から乗り降りできるメリットも捨てきれないからだ。たが、現実的には左ハンドルに拒否反応を示すユーザーもいる。右ハンドルの設定がないことが、販売の障害なのは事実だろう。

 ともあれ、アメリカン高級SUVであるキャデラックXT5は、驚くほど日本の道との親和性が良いように感じた。ちょっとだけ選択肢に組み入れてみるのも悪くはないと思う。
(文=木下隆之/レーシングドライバー)

●木下隆之
プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員 「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。

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