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たかぎこういち「“イケてる大先輩”が一刀両断」

コロナ禍、日本経済復活の好機になる兆し…世界中で日本ブームの前兆、観光大国に

文=たかぎこういち/タカギ&アソシエイツ代表、東京モード学園講師
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しながわ水族館(写真:ロイター/アフロ)

 昨今、日本経済に関してメディアでは少子高齢化や国内市場縮小などが指摘され、新型コロナウイルスの感染拡大も重なり、将来は絶望的だという論調が主流を占めている。今回は私の長いビジネス実務経験から見える新たな日本の将来を解説したい。日本人が気づいていない素晴らしい潜在的可能性にスポットをあて、世界を揺るがすコロナ終息後の日本経済に希望を抱きたい。

1.急激な原油価格安と産業構造の大変化は好機

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『アパレルは死んだのか』(たかぎこういち/総合法令出版)

 原油価格を左右する石油輸出国機構(OPEC)と非加盟主要産油10カ国からなる「OPECプラス」は、2017年1月から協調減産を続けてきた。しかし今回、4月以降の減産協議がサウジアラビア、ロシア間で決裂し原油価格に大きな影響力を持っていたOPECの終焉が始まった。

 アメリカのシェール企業は原油価格が1バレル60ドル前後なら多くが安定するが、30ドル台まで下がると大手の一部しか残らないと予測され、すでに破綻する企業も出てきている。ニューヨーク市場でも急落し、4月12日にはOPECプラスは生産量1割にあたる970万バレルの減産に合意した。4月20日には、米NYの米国産WTI原油の先物価格(5月限)が一時史上初のマイナス価格で取引を終えた。日本が過去経験してきた供給減による石油ショックとはまったく違う構造の石油ショックが現実となった。ただし、日本経済に限って見れば大きなメリットが生まれる可能性は大きい。 

2.「ジャポニズム・ブーム」再来の収穫期予想

 まったく違う世界の話に見えるが、1862年のロンドン万国博覧会、そして1867年のパリ万国博覧会へ出品された日本美術が注目され、20世紀初頭までヨーロッパで日本ブームとなった。ただの流行で終らずに芸術運動にも大きな影響を与えたことは、広く知られている。

 私見ではあるが、海外出張で45年間、ニューヨーク、パリ、香港を定点観測並みに訪問し続けてハッキリと認識できることがある。それは、寿司、ラーメン、日本酒など食文化の拡散と定着、「ハローキティ」「ポケモン」「マリオ」の世界的認知、「ドラえもん」「キャプテン翼」「ちびまる子ちゃん」などの子供向けコミックのグローバル化、「ウルトラマン」「ガンダム」の親子世代にわたる長い人気などだ。

 日本の最大の潜在的資産は、これらの日本生まれのソフトパワーが世界中の子供たちに浸透していることである。これからの消費をリードするデジタルネイティブであるミレニアル世代以下の世代は、子供の頃にすでに日本文化に触れている。つまりジャポニズム・ブームは少しづつしっかりと世界に根づきつつあるのだ。40年前、場末のパリやニューヨークのラーメン屋の客は、日本人だけだった。前回訪れたニューヨークの「一風堂」は、何百席もありながら数時間待ちで、客には日本人が珍しいほど。価格も1杯2000円以上で、隔世の感がある。

 日本人が気づかない、海外での日本文化への非常に興味深い「高い評価」をマネタライズする収穫時期は、確実に始まっているのである。 

3.視点を変えた再評価

 話は少し飛ぶが、コロナショックで在続が危ぶまれる観光産業を長期視点で見てみよう。今年は東京五輪の延期とウイルス禍で大打撃を受けている観光産業であるが、その環境さえ変われば将来的な産業であることに疑いはない。世界一の観光大国はフランスで、2018年には人口6700万人の国に8940万人もの観光客が訪れた。日本の2倍以上、人口の1.33倍である。翻ってコロナ禍以前は日本も来日観光客は増えていたが、人数では遠く足元にも及ばない。

 つまり伸びしろが存在する。比較すると、日本にはフランスが世界から観光客を引き寄せる「歴史的建造物」「多様なおいしい食事と酒」「買い物」が揃っている。日本に不足しているのは、「受け入れ体制」「外国語の日常表現力」ではないだろうか。たとえばパリのルーブル美術館の館内マップは13カ国語に対応している。予約や鑑賞解説もアプリを使用し、日本語でも可能である。

 日本人は世界でもっとも英語が不得意な人種といわれている。これは中学・高校の英語教育の失敗にほかならない。筆者の経験では、海外展示会で文法や発音を気にして外国語を話しているのは日本人だけである。言語はコミュニケーションの道具にすぎない。意識の転換とアプリ利用だけで、日本人なら今日からでも来日観光客の対応は可能だ。これも自身が気づかない大きな潜在力のひとつである。

 日本にはその上、フランスにはない、とびぬけて安全な環境、時間に正確な交通機関、完璧な清潔さ、親切で正直な人々、世界一安いマクドナルドも揃っている。スキーリゾートとして近年で地価が7倍になったニセコエリアは特殊かもしれないが、日本の潜在的なパワーは視点を変えれば世界最強である。

 欧米の文化とはまったく異質の日本文化は、約1300年前に建造された木造建築「法隆寺」を現存させている。大きな「戦(いくさ)」がなかった江戸時代は約260年間にわたり平和を享受し、日本独自の文化と特異な国民性を形成した。観光資源に限らず視点を変えれば、日本人自身が気づいていない潜在的価値はほかにも少なくない。

まとめ“Crisis brings opportunity.”

 残念ながらコロナウイルス感染拡大が原因となり世界経済は遮断され、戦後最大の国難に直面している。しかし日本人は戦後、その廃墟からも立ち上がった。失われた30年の反省とともに、今回の危機による価値観と社会構造の変化に対応していかなければならない。危機は必ず新しい可能性を連れてくる。日本人の誇りと自信を取り戻す行動によって、時間を必要としても必ずや乗り切れるものと信じて疑わない。   

(文=たかぎこういち/タカギ&アソシエイツ代表、東京モード学園講師)

たかぎこういち/タカギ&アソシエイツ代表/東京モード学園講師

たかぎこういち/タカギ&アソシエイツ代表/東京モード学園講師

カギ&アソシエイツ 代表/スタイルアドバイザー/コンサルタント(ファッション視点からの市場創造)/東京モード学園ファッションビジネス学科講師

1952年、大阪生まれ。奈良県立大学中退。大阪で服飾雑貨卸業を起業。22歳で単身渡欧後法人化代表取締役就任、1997年香港に渡り1998年、現フォリフォリジャパングループとの合併会社取締役に就任。オロビアンコ、マンハッタンポーテージ、リモワ、アニヤ・ハインドマーチなど海外ファッションブランドをプロデュースし、日本市場の成功に導く。また、第1回東京ガールズコレクションに参画。米国の有名ファッション展示会「d&a」の日本窓口なども務めた。時代に沿ったブランディング、MD手法には定評がある。2013年にファッションビジネスのコンサルティング会社「タカギ&アソシエイツ」を設立。著書に『オロビアンコの奇跡』『超入門 日・英・中 接客会話攻略ハンドブック(共著)』(共に繊研新聞社)、『一流に見える服装術』(日本実業出版社)、『アパレルは死んだのか』(総合法令出版)『アパレル業界のしくみとビジネスがしっかりわかる教科書』(技術評論社)などがある。
コンサルタントのタカギ&アソシエイツ

Instagram:@kohichi.takagi

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