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「加谷珪一の知っとくエコノミー論」

コロナ緊急経済対策117兆円、明細不明で無関係な支出も混入…GDP底上げの効果なし

文=加谷珪一/経済評論家
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 117兆円という数字は、事業規模の総額であり、この中には、企業に対する納税や社会保険料の支払い猶予(26兆円)、資金繰り支援に使われる財政投融資(約10兆円)が含まれている。納税や社会保険料の猶予はあくまで一時的なものであり、後で支払いが求められるし、貸付けも当然のことながら後日、返済しなければならない。企業にとって資金繰りを調整できる効果はあるが、財政的に見た場合、GDPの底上げには寄与しない。

 しかも、117兆円の中には今回の施策と関係ないものまで含まれている。政府は昨年、消費増税などに対応するため総額26兆円の経済対策を立案したが、その中でまだ執行されていない分(約20兆円)や、2020年3月にとりまとめた緊急経済対策の第1弾と第2弾(約2兆円)の金額も合算された。これらは今回の対策とは関係なく、見かけ上の金額を大きくするためとしか思えない。

 安倍首相は世界最大級という金額の大きさにこだわったとされており、とにかく見かけ上の金額を大きくすることが最優先された可能性が高い。今回の対策で現実にGDP拡大に効果があると思われるのは約18兆円程度(今回決定された個人への10万円給付を含む)、コロナの終息後に実施する旅行券といった施策を加えても28兆円程度である。政府は48兆円が真水と説明しているが、これは相当に拡大解釈したものであり、しかも旅行券といった施策は、現時点ではまったく効果を発揮しないので、実質的には20兆円弱といってよい。

 この金額は筆者の推定であり、多くの専門家も近い数字を提示しているが、なぜ推定になるのかというと、政府は今回の経済対策について金額の明細を提示していないからである。非常事態ともいうべき状況で立案された緊急経済対策に関して、どの項目にいくらの金額が使われるのか明示されないというのは、民主国家としてはあり得ないことである。金額もさることながら、すでに現政権は当事者能力を完全に失っていると判断せざるを得ないだろう。

日本はすでに消費主導型経済になっている

 政治的な問題はさておき、先ほど示した40兆円弱のGPDが失われるという現状に対して、現時点で政府が提示している施策では金額がまったく足りない。この事態を乗り切るためには、40~50兆円の金額を真水で提供できる大規模な経済対策が必要である。

 ここで重要となってくるのは、日本経済の基本構造の変化である。

 日本は輸出産業の設備投資で経済を成長させるという典型的な輸出主導型経済であった。だが製造業の輸出と、それに伴う工場などへの設備投資で国内所得を増やし、それが消費を拡大させるというメカニズムはすでに機能しなくなっている。

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