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「加谷珪一の知っとくエコノミー論」

コロナ緊急経済対策117兆円、明細不明で無関係な支出も混入…GDP底上げの効果なし

文=加谷珪一/経済評論家
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 日本のGDPに占める輸出の割合は18.5%しかなく、ドイツ(46.9%)はもちろんこと、一般的には輸出大国とは思われていないフランス(31.4%)よりも大幅に低い。日本の輸出比率は、世界最大の消費大国である米国(11.7%)に近く、日本はもはや消費主導型経済である。

 つまり国内消費が経済を主導し、消費の拡大によって所得を増やす構造になっている以上、成長のエンジンである個人消費を守ることが最優先課題になる。

 個人消費の中には、最低限の衣食住という必要不可欠な支出が含まれるので、ちょっとやそっとのショックでは消費のベースラインが減ることはない。だが、生活困窮者が増え、家計が広範囲に破壊されてしまうと、取り返しがつかないことになってしまう。

 つまり現時点で強化すべき政策は、家計を破壊しないための現金給付であり、中小零細事業者に対する資金援助も個人の生活を守るという点にフォーカスした上で、制度設計を行うべきである。需要そのものを増やし、消費を拡大するという政策はコロナが落ち着いてからでよい。

中長期的な財政バランスの維持は必須

 政府は今回の経済対策で個人に対して10万円を給付するが、この施策には12兆円程度の資金が必要となる。当初、計画された年収減少世帯に対する30万円の給付は批判が殺到して撤回されたが、今後、生活困窮者向けの支援策としては実施を再検討してもよいだろう。今回の10万円と、生活困窮者向け支援を合計した20兆円程度を、個人もしくは世帯に給付しなければ、家計を守ることは難しい。

 残りは、中小零細事業者の休業補償やコロナ社会に対応するためのインフラ投資などに充当するのがよいだろう。今後、事態がどう推移するのかわからないので、次年度以降については、状況を見ながら、再度、大型の施策を実施することも念頭に入れるべきである。

 問題となるのは財源だが、筆者は基本的に全額を赤字国債の発行で対応して問題ないと考える。現状は、量的緩和策によって金利は低く抑えられている。日銀が買い入れ目標を明確に示し、財務省が国債市場をしっかり制御すれば、現時点で50兆円、国債を増発することなど何の問題もないはずだ。

 だが、この話は野放図に財政を拡大してもよいという意味にはならない。

 いかなる時でも中長期的な財政バランスを保つことは健全な経済成長には欠かせない要素である。世の中では過大な政府債務の是非について、日本が破綻するといった極端な悲観論や、国債を引き受けているのは国内の投資家なので問題ないといった過度な楽観論ばかりが横行しているが、政府債務が抱える問題はそうした類いの話ではない。

 つい最近まで日本の長期国債は2%を超える水準で推移していたことを考えると、3%程度まで長期金利が上昇するという事態はいつ発生してもおかしくない。今の水準で金利が3%に上昇すれば、9年程度の時間的猶予はあるものの、最終的な政府の利払い費は27兆円にも達する。税収が59兆円しかない状況で、利払い費が27兆円になれば、日本政府はまともな予算は組めなくなり、財政出動どころの話ではなくなってしまう。

 また900兆円の政府債務を抱えたままで金利が3%に上昇すれば、インフレが加速し、円安も進むことになるだろう。財政出動が実現できない中、物価が上昇するので、日本経済には甚大な影響が及ぶことになる。過大な政府債務の問題は、日本が消滅するといった極論の話ではなく、もっと現実的で切実な問題を引き起こす可能性があるのだ。

 日銀は無制限に国債を買い入れることができるわけではなく、日銀の買い入れ余力がなくなったと市場が判断すれば、金利は確実に上昇する。こうした事態を防ぐためにも、中長期的な財政収支目標の設定は不可欠であり、政府はあたらな目標を定め、市場に対してしっかりとコミットする必要があるだろう。

(文=加谷珪一/経済評論家)

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