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南清貴「すぐにできる、正しい食、間違った食」

「コロナが終息したら日本は良くなる」との見方は幻想、むしろ悪くなると考える理由

文=南清貴/フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会代表理事
「コロナが終息したら日本は良くなる」との見方は幻想、むしろ悪くなると考える理由の画像1
「Getty Images」より

 コロナ騒動が終息した暁には、世の中は一変して価値観も今までとは変わるだろう、というポジティブな見方があるようですが、筆者はまったく期待していません。諸外国においては十分に変わる可能性があるだろうと予測しますが、残念ながら我が国は、ほとんど変わらずというか、さらに悪い方向に進んでいく可能性すらあると、筆者は不安を抱いています。

 2011年に起こった東日本大震災のあと、被災地の復興に充てる財源確保を目的として、特別措置法に基づいた復興特別税の徴取が始まりました。これは復興特別法人税、復興特別所得税、そして住民税(地方税)の3つで構成されていましたが、すでに法人税は2年間で終了しており、今は所得税と住民税の2つで、2037年まで続きます。復興法人税が、なぜ2年で終了したのかについては、筆者は納得しておりませんが、終了したのは事実です。

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 すでに東日本大震災のための復興税を支払っていることすら忘れている国民が多いのではないかと推察しますが、それにも増して、この税金が復興とはまったく関係のないことに使われていることなど、知らない人がほとんどではないかと思います。

 この件に関しては、Business Journalでもジャーナリストの山口安平氏が、2013年12月18日付記事『被災地復興予算、なぜ1.4兆円が無関係事業に流用?一部は東電救済に充当の可能性も』に詳しく書いています。

 今回のコロナ騒動でのダメージは、東日本大震災やリーマンショックよりも大きいといわれます。つまり、東日本大震災の復興税よりも、国民の負担が大きくなることが予想されるのです。同じような徴収の仕方をするのか、または消費税を上げるという選択になるのかはわかりませんが、私たち国民にその負担が重くのしかかることに変わりはありません。

 本来であれば、目的の違うことに使われることがないように、きちんとしたルールを定め、それに則って税金を使うべきでしょうし、それ以前に国土強靭化の名の下に行われる不要な公共事業を見直すこと、無意味な米国製のレーダーシステムの取得費・維持費などを削減すること、どう考えても不自然なF35戦闘機を105機も追加購入することを白紙に戻すことなど、やるべきことは山ほどあるのに、それらにはまったく手をつけず、考えることを放棄してしまった国民にその負担を強いることは、許されるものではないと筆者は考えます。

日本の最大の悲劇は無能すぎる政府

 本来、政治の持つ機能としては、今ある限られた資源(お金はもちろん資源のひとつ)を、正しく分配するためのものであるはずです。正当性を主張し合う複数の意見によって出現する軋轢を調整し、またそれを国民の利益を主体に考えて管理するためのものであるべきです。決して、自己、あるいは所属する政党、またそこに連なる少数の人の利益のために力を使うものであってはならないと思います。

 そういった観点から見ると、今の日本の政治のあり方は、いかにも危ういと筆者の目には映ります。

 たとえば、今現在、コロナ騒動のあおりを受けて失業あるいはそれに近い状態になっている方に、国が費用負担をして、一時的にではあったとしても農業に従事していただく、というような措置も必要かと思われます。

 法務省の調べによれば、2018年の外国人技能実習生の数は約28万人で、このうち農・漁業、および食品製造関係に携わっている方は約3万人ほどでした。技能実習生とはいえ、この方々は、特に農業においては実質上、重要な労働力だったわけですが、コロナ騒動によって、新たな人材が確保できない状況に立ち至っています。このままでは、農業が崩壊することも考えられないことではないのです。この深刻な労働力不足を、職を失ってしまった方に提供するというような、大胆な発想の転換が求められていると筆者は思います。

 そのうちの数パーセントの方は、そのまま新規就農も可能、という措置も加われば、わずかではあっても、自給率の回復につながるかもしれません。

 しかし今は、その“わずか”が必要な時なのです。コロナ騒動が終息したその後に、まずはどのような世界が出現するのか、想像力を働かせて考えてみるべきでしょう。その想像力を持たない人たちが実権を握って離さないというところが、日本の最大の悲劇につながっていきます。

 優秀な諸外国のリーダーたちはコロナの後を見据えて、もう動き出しており、その中心は国民を飢えさせないための方策で、食料確保のためにさまざまな施策を打ち出しているというのに、日本では国民にマスクを配ろうとしています。しかも、不良品ばかりなうえに遅く、驚異的多額の出費。なおかつ、なぜその企業に任せたのかも不明です。そしてそのツケを私たち国民がまた払います。

 だから筆者は到底、世の中が一変することなど想像できないのです。
(文=南清貴/フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会代表理事)

南清貴

南清貴

フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会
代表理事。舞台演出の勉強の一環として整体を学んだことをきっかけに、体と食の関係の重要さに気づき、栄養学を徹底的に学ぶ。1995年、渋谷区代々木上原にオーガニックレストランの草分け「キヨズキッチン」を開業。2005年より「ナチュラルエイジング」というキーワードを打ち立て、全国のレストラン、カフェ、デリカテッセンなどの業態開発、企業内社員食堂や、クリニック、ホテル、スパなどのフードメニュー開発、講演活動などに力を注ぐ。最新の栄養学を料理の中心に据え、自然食やマクロビオティックとは一線を画した新しいタイプの創作料理を考案・提供し、業界やマスコミからも注目を浴びる。親しみある人柄に、著名人やモデル、医師、経営者などのファンも多い。

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