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片田珠美「精神科女医のたわごと」

コロナ禍、自殺者急増の兆候…社会的価値観の激変によるレゾンデートルの喪失感も要因

文=片田珠美/精神科医

 それ以来、年間自殺者数が3万人を超える状態が14年連続して続いた。当時の自殺率は人口10万人当たり約25人で、日本よりも自殺率が高いのは、ロシア、リトアニア、ラトビア、そして韓国くらいだった。韓国は、アカデミー賞を受賞した映画『パラサイト』でも描かれているように超学歴社会かつ超格差社会であることが影響しているのだろう。一方、旧ソ連の国々で自殺率が高かったのは、経済的困窮に加えて、それまで正しいと信じていた共産主義という価値観が崩壊したことが大きいと私は思う。

 このような価値観の急激な転換によって自殺が増加するのは、自らの存在価値を見出すのが難しくなることによる。とくにそれまで真面目に頑張ってきた人ほど、「もう自分は必要とされていないのではないか」と自身の存在価値に疑問を抱き、最悪の場合「もう生きていてもしようがない」と思い込むようになる。

 新型コロナウイルスの感染拡大は、われわれの価値観をガラリと変えた。しかも、この価値観の激変は、感染が収束した後も続くだろう。だから、同様の悲劇は今後も起きるのではないかと危惧せずにはいられない。

(文=片田珠美/精神科医)

参考文献

公益社団法人日本医師会 (編集)西島英利 (監修)『自殺予防マニュアル【第3版】地域医療を担う医師へのうつ状態・うつ病の早期発見と早期治療のために』明石書店 2014年

 

 

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