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性犯罪改正(2)

生徒や就活生に対する性犯罪の実態…性犯罪に時効は必要か?性的同意年齢「13歳」に異論も

文=林夏子/ライター
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「教師による性犯罪は、非常に起こりやすい類型だ。教師は、成績評価もあるし、一緒にいる時間も長い。学校の教師だけではなく、塾講師、スポーツインストラクターなど指導的立場にある者は、子どもにとって絶対的権力者になり得る。支配的関係にある18歳未満の者に対する性行為を処罰するため、『監護者』(刑法179条)の適用範囲を拡げることは十分考えられる」(安田教授)

立場の違いを利用した性犯罪にどう対処するか

 監護者わいせつ罪及び性交等罪(刑法179条)は、18歳未満の者を保護するものだ。しかし、18歳以上でも就活生と採用担当者や上司と部下など、地位や立場を利用され、望まない性行為を強要される場合がある。その場合はどうしたらよいか。

「私の意見としては、『抗拒不能』(刑法178条)を柔軟に解釈して、就活生と採用担当、上司と部下など支配関係があれば、『抗拒不能』の一類型として認定していくことが可能だと考える。ただ、抗拒不能要件は最高裁判例もなく、岡崎支部の判決【※3】のような不当に厳しい基準での判決が出るなど、解釈が安定していない点に問題がある」(安田教授)

 解釈の安定していない抗拒不能要件を撤廃し、地位や関係性を利用した性犯罪規定を創設すべきとする意見も出ている。

 前述の市民団体の改正案は「現にその者を監護又は介護する者、親族、後見人、教師、指導者、雇用者、上司、施設職員その他同種の性質の関係にある者」からの影響力を利用した性被害を処罰の対象としている。

 切羽詰まっている就活生は藁にもすがりたいと思っている。上司の誘いを断れば、仕事に影響するかもしれないと考える。対等でない関係でその影響力を利用したわいせつ行為やセクハラは、暴行脅迫がなく形の上で同意があったとしても、犯罪としていくことが必要だ。

 立法論として、現行法の条文解釈によって認定するか、条文を創設するかについては意見が分かれるが、条文を創設し、要件を明確にしたほうが、被害者は訴えやすいのではないだろうか。

性犯罪の実態に即した法改正を

 2019年12月の伊藤詩織さんの勝訴判決は、民事ではあるが、社会に大きなインパクトを与えた。フラワーデモのきっかけとなった岡崎支部の判決は逆転有罪判決が出た。刑法改正の検討会にSpring代表の山本潤氏が入った。被害者の声の高まりによって、司法判断や性犯罪が変わろうとしている。

 ――被害の現場で、被害者は恐怖や驚きで抵抗できない。被害に遭ったことで自分を責め、うつやPTSDに苦しみ、ようやく被害を訴えられるようになったときに時効の壁が立ちはだかる。生徒や就活生に対する性犯罪など立場を巧みに利用する加害者像――このような性犯罪の実態に即した改正を、被害者が泣き寝入りせず訴えることができるような改正を、期待したい。

(文=林夏子/ライター)

【※1】「性犯罪に関する施策検討に向けた実態調査ワーキンググループ(第10回)

【※2】「私たちが求める刑法性犯罪規定改正案(叩き台)」(刑法改正市民プロジェクト)

【※3】2019年3月、名古屋地裁岡崎支部が中学2年の頃から性虐待を続け、19歳になった娘と性交した父親に対する準強制性交等罪の事件で、父親に無罪判決を言い渡した。

【参考資料】
見直そう!刑法性犯罪」(一般社団法人Spring)

『性犯罪・児童虐待捜査ハンドブック』(立花書房/田中嘉寿子)

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