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稼働店舗数347店(3月末時点)のうち200店をFC店が占め、足元では新型コロナによる臨時休業が広がっている。FC店オーナーの離脱を防ぐことを、コロワイドは子会社化を急ぐ理由にあげている。
大戸屋の既存店の売上は前年実績割れが続く。19年4月から20年3月までの通期で既存店売り上げは6.6%減った。3月(単月)は20.7%減と急落した。3度にわたる値上げが客離れを起こした、と指摘されている。昨年4月のメニュー改定で、当時720円(税込み)で最も単価が低く、人気メニュー3位だった「大戸屋ランチ」を、低採算を理由に廃止した。これが常連客の離反を招く引き金になった。
大戸屋HDの20年3月期の売上高は前の期比3%減の250億円、最終損益は上場以来初の5億3000万円の赤字に転落する見込み。事業会社大戸屋の山本匡哉社長は3月31日付で退任。4月1日から持ち株会社大戸屋HDの窪田社長が大戸屋社長を兼務した。山本社長は業績不振による事実上の解任といわれている。
コロワイドはセントラルキッチンに変更する
コロワイドが打ち出した大戸屋の経営改善策では、全国10カ所で稼働しているコロワイドのセントラルキッチンの共同利用や物流の共通化、仕入れの一元化で6億9000万円のコスト削減が可能と試算している。大戸屋の魅力はセントラルキッチンでなく店内で調理するところだ。野菜や肉などは各店舗でカットする。焼き魚の定食など前日にタレに浸して仕込んでおくものもある。店内調理だと、必然的に店舗運営にかかる人手が多くなる。開店前に仕込み作業を行うため労働時間も長くなる。店内調理を売り物にしてきたが、客数が増えなければ、コスト増となり、これが赤字に直結する。
コロワイドと大戸屋の意見の対立は、セントラルキッチンか、店内調理なのかという点だった。大戸屋にとって店内調理は、他の定食チェーンと差別化できる、いわば生命線である。最大の魅力の店内調理をコスト削減を理由に中止しますとは言えない。
コロワイドは大戸屋包囲網を絞る。3000円の食事券付きで大戸屋の株主にアンケートしたところ、「回答した約1万8000人の9割強がコロワイドの傘下入りに賛同した」という。大戸屋の子会社化は既定路線だとしても、創業家の智仁氏を復帰させるのは、吉と出るか、凶と出るか。発行済み株式の6割を保有しているとされる一般の個人株主が、智仁氏の取締役選任にどれだけの賛成票を投じるかが焦点となる。
(文=編集部)