北朝鮮・金正恩、生存でも次第に無力化し王朝崩壊の可能性…金与正は後継者になれない理由の画像1
肥料工場の竣工式に出席した北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(提供:KNS/KCNA/AFP/アフロ)

 北朝鮮・平壌の金正恩朝鮮労働党委員長の健康不安説が世界をかけめぐった。これは米CNNの報道に端を発するものだが、「重態説」「生存説」「新型コロナウイルスからの逃避説」などが取り沙汰された末に、5月2日に視察の様子が公開され、健在が明らかになった。

 一方で、金委員長の後継者候補をめぐる報道も過熱しており、北朝鮮情勢は不透明な状況が続く。果たして、今後はどうなるのか。元駐日韓国大使館公使で「統一日報」論説主幹の洪熒(ホン・ヒョン)氏に聞いた。

平壌は大混乱…後継権力はどうなる?

――金委員長の生死をめぐり、世界中で情報が錯綜しました。

洪熒氏(以下、洪) 金正恩の健康になんらかの事故が起きたのは事実でしょう。私が注目しているのは、中国が党対外連絡部長の率いる医師団を派遣したのかどうかという点です。中共当局は、対外連絡部長一行の訪朝報道について否定も肯定もしていません。

 いずれにしろ、もう金正恩の「リーダーシップ」は元に戻らないと言えるのではないか。生きていても、健康に重大な不安を抱えている独裁者は、いわゆるレームダックになります。健康に深刻な問題が見られなかった金日成も、金正日を後継者にしてからは金日成・金正日共同政権になり、やがて金正日・金日成共同政権になり、晩年の金日成は自分の後継者の息子に阿附までしたのです。

 金正恩の場合は、すでに昨年末からは事実上、妹の金与正との兄弟政権・共同政権と言われます。金与正は朝鮮労働党第1副部長という要職に就いていますが、兄の信頼があってのことで、自力で権力基盤を築き維持するのは不可能です。金正恩が妹に全的に頼るのは、金氏王朝を支えてきた党と軍の核心勢力やエリート既得権層を粛清、先代からの側近たちを一掃したためです。

 金正恩は、金正日によって急遽後継者になったときの体重は、イメージ操作のため、祖父の金日成とほぼ同じ90キロ程度でした。だが、今は40キロほど増えて130~140キロになり、命を脅かす健康管理の失敗は明白です。問題は、金正恩に厳しく健康管理を強いる人が体制内に存在しないということです。

――最高指導者の動向が不透明な状況が続いたことで、北朝鮮の社会はどうなっているのでしょうか。

 平壌内部では大混乱が起きたそうです。買い占めが起こっており、当局からなんの発表もないことに不安を抱いている市民も多いということです。

 金正恩は、出席すべき行事に3つも出ていません。まず、最高人民会議(4月12日召集)で代議員との記念写真を撮らなかった。4月15日の金日成の生誕日と、4月25日の朝鮮人民革命軍創建日。これは、金氏王朝の始祖・金日成が抗日遊撃隊を組織したとされる日です。

 金正恩は2019年2月、列車でベトナム・ハノイまで行ってドナルド・トランプ米大統領と2回目の首脳会談に臨みましたが、期待に反して決裂に終わりました。その影響で、精神的にも相当ダメージを受けたとも言われています。いずれにしろ、金与正も金平一(金日成の息子)も後継者になり得ないとなれば、金氏王朝の暴政は一応終わりです。

(構成=長井雄一朗/ライター)

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