
前回の記事で、安倍晋三首相の記者会見が「主演・安倍首相 共演・記者クラブ」の茶番劇であり、そこにフリーランスが参加して本音を聞き出すことが重要だと解説した。
立法、行政、司法の主要な建物に記者クラブが置かれている日本。取材対象者と取材者が一緒に勤務しているような環境で、癒着が生まれないはずがない。
2020年1月7日、カジノ管理委員会が内閣府の外局として発足した。1月10日、カジノ管理委員会は初会合を開き、続いて北村道夫委員長(元福岡高検検事長)が記者会見を行った。
カジノ管理委員会事務局(以下、事務局)によると、「記者会見開催は内閣府の記者クラブの掲示板で通知しました」という。つまり、北村委員長は記者クラブのみを対象に記者会見する予定だったのである。ネットメディアや外国人記者、フリーランスも対象とするならば、安倍首相の記者会見のようにホームページで通知しなければならない。
ところが、ハプニングが起きる。
「記者クラブから記者会見開催の情報を入手したフリーランスが『自分も参加したい』と電話してきたんです。どのような記事を執筆しているのか聞いて参加を許可しました」(事務局)
安倍首相以下の各大臣の記者会見にもフリーランスが参加している。北村委員長の記者会見にフリーランスが参加できない理由はない。今後、カジノ管理委員会が記者会見を行う場合、正々堂々とホームページで通知するべきだ。
カジノ管理委員長の記者会見録は未公開
北村委員長の記者会見は翌日の朝刊で記事になっている。以下、北村委員長の発言を拾い出してみよう。
○朝日新聞
「中立性、公平性を旨として業務を遂行していきたい。カジノ事業などに対する国民の理解と信頼を得られるよう努めたい」
「カジノ事業免許の厳正な審査などを通じて、健全な事業運営の確保をはかることが極めて重要だ」
「捜査中で、お答えを差し控えたい」(秋元司衆議院議員が逮捕されたIR汚職事件について)
「国家公務員倫理法などを順守し、職務の公正性や中立性に疑問を生じさせないよう指導監督していきたいと現時点は考えている」(事務局職員について)
○毎日新聞
「中立性、公平性を旨として業務をしたい。懸念に適切に対応し、国民の理解と信頼を得られるよう努めたい」
「捜査中の事件については答えを控える」(IR汚職事件について)
「健全なカジノ事業運営の確保を図り、国民が抱いている懸念を払拭していく」
○読売新聞
「これまで我が国になかった、全く新しい業務を担うことは大きな挑戦だ。国民の信頼をしっかり築けるよう、身を引き締めて業務に励んでいく」
「捜査中の事件については答えを差し控えたい」(IR汚職事件について)
「事務局職員について、職務の公正性や中立性に疑問を生じさせないように指導、監督していきたい」
あたりさわりのない就任のあいさつという感じだ。筆者が本連載で追及している樋口建史委員(元警視総監)の利益相反疑惑(樋口委員が、IRを手がける西村あさひ法律事務所のアドバイザーも兼任していた問題)のような生臭い話が出た様子はない。