孫正義氏、医療支援の裏でファーウェイの送電網構築を画策か…大赤字・ソフトバンクの命綱

孫正義氏とジャック・マー氏(写真:ロイター/アフロ)

 新型コロナウイルス騒動の発生後から、米国防権限法で禁止された中国通信大手ファーウェイとその仲間が、医療支援に勤しんでいる。

 4月4日、ニューヨーク州知事が中国政府から贈られた人工呼吸器1000台がJFK空港に到着した際に、「中国政府、ジャック・マー、蔡崇信に感謝します」とツイートしたことがアメリカで話題となっている。

 ジャック・マー氏はアリババの創業者、蔡崇信氏はアリババの副会長で孫正義氏の右腕。どちらも、米国防権限法で禁止された中国通信大手ファーウェイのエコシステム企業だ。

 そのころ、日本ではシャープがマスク生産を始めたことが話題となっていたが、シャープはすでに台湾フォックスコン・テクノロジー・グループの子会社で外資系企業だ。

 これは、そろそろ日本ではソフトバンクが動くかと思った頃に、孫氏が医療用フェイスシールドと医療用メガネを緊急に調達できるとツイートし、それに吉村洋文・大阪府知事が「是非、大阪府で買取りさせて頂ければと思います」と返信したことが、日本で話題となった。

 大阪の企業が防護服13万着あると吉村府知事あてにツイッターで書き込んだのは完全無視で、大阪スマートシティで協力関係にあるソフトバンクの孫氏に「孫会長、初めまして」と挨拶しているのが「白々しい」との声も上がっている。

 この医療支援に関わるソフトバンク、アリババ、シャープ、フォックスコン、蔡崇信氏の共通点は、バックにファーウェイがいるということだ。

 ファーウェイは創業者の娘で副会長兼CFO(最高財務責任者)の孟晩舟氏が米司法省に起訴されて以来、日米でイメージが悪化してきているのでPR戦略に打って出たわけだが、これには裏がある。

中国が推進するスマートグリッド、“インフラ・テロ”のリスクも

 中国国家電網が、中国から日本を含む世界を送電網と通信網とセットでつないでしまおうという計画において、ファーウェイのスマートグリッドを推進しているのだ。中国国家電網公司、韓国電力公社、ロシアの国営送電会社、ソフトバンクが、巨大な国際送電網を世界に築くためだ。

 その国際団体の会長に中国国家電網会長の劉振亜氏が就任し、副会長には孫氏が就任しており、孫氏は「アジア・スーパーグリッド構想」の中心人物で日中を送電網でつないで電力の流れを支配下に置く役割を担っている。

 この構想の内容について、中国大手通信事業者に取材したところ、ファーウェイの計画では中国製のスマートグリッドを各家庭に入れれば、ユーザーはインターネット料金が無料になり、モンゴルで発電したクリーンエネルギーを日本が利用できるので、原発事故に悩まされる必要がなくなるというメリットがあるという。

 ただし、スマートグリッドで電気代を節約するには、熱センサーや振動センサーで部屋のどこに人がいるかを察知し、AI(人工知能)が遠隔でライトやエアコンを調整する必要がある。ということは、これが導入されると、日本国民の自宅の通信から、居住者が部屋のどこにいて何をしているのかという情報までもが中国政府に漏洩するリスクがあるのだ。

 拙著新刊『量子コンピュータの衝撃』(宝島社)でも触れたが、ソフトバンク・ビジョン・ファンドへの投資で大赤字を出しているソフトバンクが、各自治体の首長にSNSで取り入り医療支援でイメージ改善を狙っていることから、「アジア・スーパーグリッド構想」がソフトバンクの命綱となっている可能性が高い。

 中国は新型コロナ景気対策としてインフラ投資のために新規に建設基金を立ち上げた。このインフラ投資の目玉が5G通信基地局と大規模電力網への投資で、3.5兆円規模の予算が組まれている。

 日本に中国からの送電網を引いて、各地域の電力会社と行政区の首長と話をつけ、中国のインフラ投資の基金にありつければ、ソフトバンクは首の皮がつながる。そのために、孫氏は火だるまになったビジョンファンドを抱えながらも、精力的に医療支援でイメージアップを図っているのだろう。

 そこで思い出すのが、大阪市長が橋下徹氏を関西電力の社外取締役にするように要請し、「拒否すれば訴訟する」と関電を恫喝した一件だ。大阪はそもそもスマートシティで孫氏と関係は良いはずなので、電力会社にスーパーグリッド構想で協力をしてもらおうと考えていたのではないか。

 残念ながら、日本政府は「アジア・スーパーグリッド構想」における電力インフラの脅威に対する政策は打たれていない。

 5月1日、トランプ大統領は「送電網に関する国家非常事態宣言」で、一部の外国製品を排除する大統領命令に署名した。

 敵対する外国政府の支配下にある企業のスマートグリッドによって各家庭を監視されたり、電力供給を勝手に制御される“インフラ・テロ”のリスクから米市民を守るためだ。

 日本政府も、手遅れにならないうちに対策を打ち出してくれることを願うばかりである。
(文=深田萌絵/ITビジネスアナリスト)

深田萌絵/ITビジネスアナリスト

早稲田大学政治経済学部卒 学生時代に株アイドルの傍らファンドでインターン、リサーチハウスでジュニア・アナリストとして調査の仕事に従事。外資系証券会社を経て、現在IT企業を経営。

Twitter:@@MoeFukada

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