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昭和電工、時価総額3倍の「1兆円」で日立化成を買収の勝算…巨額のれん代償却の重荷

文=編集部
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 18年末になると日立化成の売却説が公然と語られるようになった。18年5月、経団連会長に就任した日立製作所の中西宏明会長は、会員企業に「品質管理の徹底」を呼びかけており、お膝元の日立化成の検査の不正でメンツ丸潰れとなった。「本来売りたくなかった日立化成を売却の対象にしたのは、中西氏の怒りを買ったから」(関係者)といわれている。

 日立化成は「御三家」としてグループの中核を担ってきた。日立製作所の川村隆元社長(現・東京電力HD会長。6月末に退任)は16年まで日立化成の会長を務めていた。

最高値をつけた昭和電工が落札

 日立化成の売却スケジュールが当初計画より大幅に遅れたのは、株価の高騰がネックとなったからだ。18年6月、検査不正が発覚すると株価は一時、1500円台まで下落した。それが19年春に売却計画が明らかになると株価は右肩上がりに上昇。買い手は急激な株価上昇で二の足を踏むようになる。

 当初、三井化学や三菱ケミカルHD、住友化学といった財閥系の総合化学メーカーが関心を示した。特に2社に規模で劣る三井化学が熱心だったが、「完全買収するにはコストがかかりすぎる」として撤退。米コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)などの投資ファンド、韓国のロッテケミカルなども脱落した。

 2次入札には昭和電工と日東電工、米投資ファンドのベインキャピタル、カーライル・グループの4社が進んだ。提示額が最も高かった昭和電工が最終的に落札した。昭和電工は19年12月、日立化成をTOBで買収すると発表。買収額は約9600億円。日立化成の時価総額約4500億円の2倍以上。「あまりにも高すぎる」と株式市場では高値づかみを懸念する声がほとんどだった。

M&Aの成功体験

 昭和電工の森川社長は「妥当な金額」として意に介さなかった。森川氏は17年1月、社長に就任した。東大工学部卒。昭和電工に入社以来、執行役員になるまで一貫して化学品の研究開発畑を歩んできた。昭和電工では20年ぶりの技術系社長だった。昭和電工が巨額の資金を投入してまでも日立化成の買収に乗り出した裏には、過去のM&A(合併・買収)の成功体験がある。市川秀夫社長(現・取締役会議長)時代の16年10月に発表した、独SGLグループの黒鉛電極事業の買収を指す。

 黒鉛電極とは鉄のスクラップを溶かす電気製鋼炉(電炉)で、電流を流して炉内を加熱するために使われる電極棒(部材)のこと。シェアで世界3位だった昭和電工は同2位のSGLグループの黒鉛電極事業を買収して一気に勝負に出た。当時、黒鉛電極の主要顧客である電炉メーカーが苦境に陥っていたことから、買収価格は156億円ですんだ。

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