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アベノマスク発注先の興和とはどんな会社?三輪社長の「一般薬連」分裂騒動・訴訟

文=編集部
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興和株式会社「キャベジンコーワα」(サイト「Amazon」より)

 新型コロナウイルス対策として安倍晋三首相が「1世帯あたり2枚配布」とぶち上げた布製(ガーゼ)マスクが不評で、“アベノマスク”と揶揄された。供給元は5社とされ、総合商社の伊藤忠商事、医薬品メーカーの興和(名古屋市、非上場)、アパレルOEM(相手先ブランドの生産)最大手のマツオカコーポレーション(東証1部)、「日本マスク」のブランドで知られる横井定(よこいさだ、名古屋市、非上場)、そしてバイオマス発電向けの木製パレットの輸入業者ユースビオ(福島市、非上場)だ。

 政府の公表が遅れたのがユースビオ。登記された場所には会社の看板がなく、過去に社長が脱税で福島地裁で執行猶予付きの有罪判決を受けていたことも話題となった。

 アベノマスクは出足からつまずいた。布マスクは介護施設や妊婦向けに2000万枚、全世帯向けに1億3000万枚を政府が調達。1世帯2枚ずつ配布する計画で、東京都内では4月17日から配布が始まった。伊藤忠と興和が供給したマスクの一部から黄ばみや黒ずみなどの汚れが見つかり、両社は未配布分を全量回収することを決めた。

 興和の三輪芳弘社長は「週刊文春」(文藝春秋/5月7日・14日合併号)で、「完全な逆ザヤ。絶対に利益は出ません。(中国へ)飛行機を何十往復も飛ばしていますし、持ち出しです。これで批判まで受けたら正直たまらんですよ」。安倍首相との関係が云々されているが「全然知らない」とした。

 胃腸薬の「キャベジンコーワ」、かゆみ止めの「ウナコーワ」など消費者に知名度の高い製品を世に送り出しているが、三次元マスクもつくっている。興和は今年3月、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、ガーゼマスクを新たに生産すると発表した。国内・海外の工場で3月に1500万枚、4月に5000万枚の生産を目指すとした。政府の補助金を活用し、使い捨て不織布マスクの増産に向け設備投資をした。

 アベノマスクの受注額は興和が約54.8億円でトップ、伊藤忠が28.5億円、マツオカコーポレーションが7.6億円。3社のなかで興和が6割を占めた。

 

一般薬連のお家騒動

 新型コロナウイルスの感染拡大で揺れる最中、“コップの中の泥仕合”と皮肉られた医薬品業界団体の民事訴訟がようやく決着した。市販薬を手がける業界5団体で構成される日本一般用医薬品連合会(一般薬連)のお家騒動である。

 原告団体「日本一般用医薬品連合会(代表者会長 柴田仁)」は、被告団体「日本一般用医薬品連合会(代表者会長 三輪芳弘)」を相手取り、名称及びロゴマークの使用差し止めなどを求め、2018年11月21日、東京地裁に訴えを起こしていた。原告団体の一般薬連は3月4日、裁判が終結したと発表した。

<本件訴訟につき、本日(2020年3月4日)、被告団体から請求認諾書が提出され、請求の認諾により、当会の請求が全て認められる形で終了しましたことをお知らせします>

 その請求とは以下のとおり。

(1)「日本一般用医薬品連合会」の表示を、被告団体は使用してはならない。

(2)ロゴマークについて、被告団体は使用してはならない。

(3)銀行口座の預金債権は、被告団体ではなく、原告団体に所属する。

(4)被告団体が訴訟費用を負担する。

 原告団体の全面勝訴。全く同じ名前の団体が2つ存在するという異常事態が続いていたが、ひとまず解消した。

キャベジンの興和と正露丸の大幸薬品の対決

 一般薬連の会長人事が混乱の発端だった。16年5月から一般薬連の会長を務める三輪氏は、18年5月末で任期切れを迎えるはずだった。ところが、5月14日に続投の意思を表明した。

 三輪氏の強引な組織運営に不満が続出。反三輪派の一般薬連幹部が5月19日、会則で定めた「会長に事故ある事態」に当たると主張し、緊急理事会を招集。構成5団体が推す柴田仁氏(大幸薬品会長)を同日付で会長とする人事案を24対1の賛成多数で決めた。その後、興和が一般薬連に派遣していた出向者2人を解任した。

 これを不服とした三輪氏は会長選の手続きに問題あるとして、勝手に事務局を運営したことなどを理由に、元厚労省審議官(医薬担当)の黒川達夫理事長を解任。柴田会長と黒川理事長を名誉棄損で訴えるとともに、あらためて三輪氏自身を会長とし、一般薬連の名称はそのまま使用することにした。

 三輪氏が招集した理事会に出席したのは理事33人のうち興和出身の2人の理事のみ。この場で三輪会長の続投と出席した2人を除く全理事の辞任を決めていた。これで同じ名称の一般薬連が2つ、会長が2人存在。事務所も2つある異常事態に陥った。柴田氏側は18年11月、三輪氏側を被告として、「一般薬連」の名称使用の差し止めを求めて東京地裁に提訴したのである。

紡績会社から医薬品メーカーに大変身

 興和は1894年、名古屋市で創業した綿布問屋が前身。紡績業に進出し、興和紡績として名古屋証券取引所と大阪証券取引所に株式を上場していた。09年12月、三輪氏が代表取締役を兼務していた興和紡がマネジメント・バイアウト(MBO)のためのTOBを実施。10年に興和紡績は上場廃止。興和紡が興和紡績を吸収合併した。創業事業である紡績は行っていない。

 興和紡は興和グループの持ち株会社の性格をもち、興和の24.12%の株式を保有する筆頭株主(19年9月末時点)。現在の興和は1939年、商工分離の国策により、紡績会社の商事部門が分離して設立されたカネカ服部商店がルーツだ。60年に興和に商号変更している。54年、興和新薬を設立して製薬業に進出して以降、医薬品事業が主力となる。2019年、興和新薬を興和が吸収合併した。興和は上場していない。

 19年3月期の連結決算の売上高は前の期比0.5%増の4365億円、純利益は19億円の黒字(前期は11億円の赤字)に転換した。18年3月期は、傘下の百貨店、丸栄の閉店に伴う損失を100億円規模で計上したことが響き赤字に転落していた。

名古屋の繁華街、栄地区の復権に挑む

 三輪社長が今、力を入れているのが、老舗百貨店丸栄跡地の再開発だ。丸栄は約400年の歴史を持ち、かつては松坂屋や名鉄、三越と共に名古屋百貨店の「4M」と称された。だが、00年、JR名古屋高島屋が開業すると、名古屋の消費の中心は栄地区から駅前に移った。今では「高島屋1強時代」といわれ、名古屋の百貨店売上高トップを独走している。業績不振が続く丸栄は興和に支援を要請した。興和は出資比率を徐々に増やし、17年に完全子会社とした。それでも業績は低迷し、18年6月、閉店に追い込まれた。

 三輪社長は19年5月、丸栄跡地を3階建ての商業施設にすると発表。「2020年末に食を中心とした施設を完成させる」と表明した。さらに、隣接地のビルを解体し、大型の施設をスクラップ・アンド・ビルドする計画だ。かつて名古屋随一の繁華街だった栄地区の復権に力を入れる。だが、市の中心部にあった繁華街が、栄光の座を失った後、返り咲いた例はない。三輪社長の決断は吉と出るか。一般薬連での独走にみられるような不安がつきまとう。

(文=編集部)

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