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日産、再び経営危機か…大幅赤字転落の懸念浮上、日産・ルノー連合が空中分解寸前

文=河村靖史/ジャーナリスト
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日産自動車 第3四半期決算発表(写真:AFP/アフロ)

 日産自動車が再び経営危機の瀬戸際に立たされている。業績不振に陥っているところに新型コロナウイルス感染拡大の影響が直撃、大規模リストラが避けられない。5月28日にアライアンスを組むルノー、三菱自動車と連携して経営を再建する中期経営計画の見直しを発表する予定だが、両社ともに経営が悪化しており、利害も対立する。カルロス・ゴーン元会長を追放し経営体制を刷新した日産、そして3社アライアンスは早くも試練を迎える。

 日産は4月28日、2020年3月期の連結業績の下方修正を発表した。今年2月に公表した業績見通しでは、最終利益が650億円の黒字になると予想していたが、予想から1500億~1600億円悪化する可能性があるとしており、通期業績がリーマンショック以来、11期ぶりに最終赤字になる見通しだ。新型コロナウイルス感染拡大で、新車販売台数が大幅に落ち込み、サプライチェーン(部品供給網)の問題や生産調整のため、国内外で工場の稼働を停止したためだ。

 ただ、日産は新型コロナウイルス感染拡大の前から業績は悪化していた。ゴーン元会長時代に無理な拡大戦略を推進して新興国を中心に生産拠点を拡張してきた。一方で、新型車開発にまで投資が回らず、日米欧の各市場で販売しているモデルが高齢化して販売が低迷。主力市場である米国では、販売不振を補うため、多額の販売奨励金(インセンティブ)を投入したことで収益力が低下した。そのせいでブランド力が低下してさらに販売が落ち込み、インセンティブを増やすという悪循環に陥っていた。

 日産は前任社長の西川廣人氏が2019年7月、2023年までにグローバルで稼働率の低いラインの閉鎖などを進め、生産能力を年間720万台から660万台にまで削減、人員も全体の約1割にあたる1万2500人を削減するなどの中期経営計画をまとめた。これによって全世界の工場の稼働率を69%から86%に引き上げ、売上高営業利益率6%台を達成する計画だった。

 その後、日産の業績は想定以上に悪化する。米国事業を立て直すため、インセンティブと在庫の削減に着手したものの、販売は低迷。19年10-12月期(第3四半期)は赤字に転落している。

 昨年12月に社長に就任した内田誠氏は着任早々、抜本的な経営改革に向けて中期経営計画の見直しに着手した。このカギとなるのが今年1月に合意したルノー、三菱自との新たな枠組みだ。地域や技術など、分野ごとにリーダーとなる1社が残りの2社を支援するというもの。これによって例えば稼働率の低い工場を閉鎖して、生産モデルを同じ市場にあるリーダーの工場に委託するなど、アライアンスで生産効率化を図るというものだ。

 日産の現行計画では生産能力を削減しても660万台。これに対して19年度の世界販売台数は493万台で、70万台近いギャップがある。このため、中期経営計画の見直しでは、ルノー、三菱自と協力しながら日産がどこまで踏み込んだ成長戦略を示すことができるかが焦点になる。

3社アライアンス、対立する各社の利害

 ところが3社アライアンスによる生産効率化は人員削減などの痛みを伴うだけに、各社の利害も対立するケースが多く、簡単ではない。

 日産はインドネシアで「ダットサン」ブランド車の販売から撤退した。日産のインドネシア工場はダットサンしか生産していないため、撤退で閉鎖するしかない。しかも、インドネシア市場では三菱自が強く、日産が現地に生産拠点が必要なら三菱自のインドネシア工場を活用すればいいはずだ。しかし、日産はインドネシア工場を存続するため、三菱自向けにエンジンの製造を検討している。しかし、三菱自としてはエンジンを自社生産したほうが経営上のメリットは大きく、日産の要望に簡単にはのれない。

 実際、ルノー、三菱自はもともと日産ほどではないものの、業績が低迷していたところに新型コロナウイルス問題で経営が急激に悪化している。三菱自は販売不振によって20年3月期に最終赤字に転落する見通し。ルノーも上級モデルの販売低迷と日産の業績不振の影響から、19年12月期業績は最終損益が09年以来、10期ぶりに赤字となり、20年1-3月期も売上高が前年同期比19%の減収となっている。先行き不透明な中で、両社ともに日産の支援どころではないのが本音だ。

 日産は業績見通しの下方修正について中期計画の見直しに伴う影響を含んでいないため、追加的な引当金を計上する可能性があるとしており、大幅赤字となる可能性が高い。アライアンスのバックアップも受けられず、日産の経営が危機的な状況になる可能性も否定できない。

 ゴーン元会長の側近だった日産の西川氏、ルノーのティエリー・ボロレ氏という2人のCEOが退任するなど、旧経営体制を刷新した3社アライアンスは、現在の資本関係を維持したまま連携を強化して再び世界トップの自動車メーカーグループを目指していた。しかし、想定以上の業績悪化でリストラをめぐるせめぎ合いが本格化しており、早くもその目論見はほころびつつある。5月28日に発表される中期経営計画の見直しによっては、3社アライアンスが空中分解することになりかねない情勢だ。

(文=河村靖史/ジャーナリスト)

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