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「自粛要請」でコロナは解決しない…国民全員への抗体検査なら社会活動停止せずに済む

文=横山渉/ジャーナリスト
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「Getty Images」より

 安倍晋三首相は5月4日、緊急事態宣言を5月31日まで延長すると表明した。対象は全都道府県のままだ。14日をめどに感染状況などを分析し、解除の前倒しを検討するとしているものの、精神科医の和田秀樹氏は「今の対処方法(緊急事態宣言による自粛要請)なら、新薬が開発されるまでは絶対に解決しない」と懐疑的だ。延長が決まって“コロナ疲れ”も指摘され始めたが、和田氏が提案する解決法は極めて明快だ。

「一番簡単な方法は、狂牛病のときに行われたような全数調査。国民全員に抗体検査をして、その結果を基に外出許可証を与えればいい。そうすれば、社会活動を止めずに済む。海外で市販されている検査キットはかなり安い」

 日本感染症学会は先月末、新型コロナウイルスの抗体検査に用いられる4種類のキットについて検討した結果を公表し、「感染症の診断に活用することには推奨できない」としている。実用化を検討していた厚生労働省から依頼され、性能評価のための予備的検討を行っていた。同学会が推奨できないとした理由は、「性能はキット間の差が大きい可能性がある」ということと「キットには定められた評価法がない」ということだった。この緊急事態においても、従来どおりの“安全運転”で行こうというわけだ。

 しかし、そうした同学会の鈍い動きを尻目に、民間の動きは早い。都内で診療所を展開する一般社団法人ウェルケアとウェルメディカルグループは、研究用抗体判定キットを使って自宅などで新型コロナウイルスに感染したかどうかを推定するオンライン遠隔健康医療相談サービスを5月5日から開始した。価格は1人7,975円。このサービスを申し込むと、抗体判定キットとオンライン遠隔健康医療相談シートのアクセス情報が自宅に送られてくる。

医療に完璧性を求めすぎる日本人

 和田氏は新薬開発に関して、次のように語る。

「新薬の見込みはありますよ。ただ、今回の新型コロナにターゲットを絞って開発しようとすれば、2年ぐらいはかかってしまうかもしれない。新型コロナは一般的には弱毒なんだけど、そういう弱毒性のウイルスをピンポイントにして開発しようとしても、意外にこれまで成功したためしがない。だから、風邪(普通感冒)の特効薬をつくったらノーベル賞と言われるわけです。今は、他のウイルス性疾患に効果のある薬をいくつか試してみたら7割くらいの患者には効果がありそうだと、既存の薬でそういう使い方をしている」

 エボラ出血熱の治療薬として開発された「レムデシビル」は米国で新型コロナ治療薬として使用が認められたのを受け、開発元のギリアド・サイエンシズ社は4日に日本で承認申請した。そして、7日に特例承認が決まった。特例承認は海外で販売されるなどした医薬品について、国内の薬事承認の審査を簡略化できる制度だが、申請からわずか3日は異例の早さだ。

 次に期待されるのは、インフルエンザ治療薬として開発された「アビガン」だろう。国内メーカー、富士フイルム富山化学の開発薬にもかかわらず、新型コロナ用に認可されないのは、開発過程の動物による安全性試験で胎児に奇形が生じる可能性が認められたためだという。しかし、芸能人の宮藤官九郎氏や石田純一氏がアビガンを処方されて回復したというニュースが駆けめぐり、“アビガン待望論”が否応なしに高まったのも無理からぬところだ。そうした声に押されたのか、安倍首相はアビガンについても新型コロナ治療薬として今月中の承認を目指すとしている。

 さて、レムデシビルにしてもアビガンにしても、日本で実際に新型コロナにどのくらい効くのか、現段階では未知数だ。9割以上の患者を治すかもしれないし、5割以下ということだってありえる。

 和田氏は「恐怖に煽られた国民とマスメディアの前で、9割の患者に効く薬ができたといったところで満足するのか」と疑問を投げかける。

「日本はお産で失敗しても医療訴訟になる可能性がある国。そもそもお産には0.3%くらい失敗する可能性がつきまとう。精神科でいえば、すべてのうつ病が治せるわけではない。9割くらいの患者を治せるとしても、1割くらいはどんな薬を使っても助からないということが起こりうる。なかなかそのことを理解してもらえない。日本人は医療に完璧性を求める傾向がある」

 どんな薬にも効能(作用)があれば、なんらかの副作用が伴う。ドラッグストアの市販薬だって「眠くなる」程度の副作用はある。日本ではそういう基本的なことすら理解していない人が多いということかもしれない。だから、和田氏が言うように医療に完璧性を求めるのだ。

 新型コロナに対する抗ウイルス薬の候補として国内外で臨床試験・臨床研究が行われているのは、レムデシビルとアビガン以外にも、HIV向けに開発された米アッヴィ社の「カレトラ」、気管支喘息向けに開発された帝人ファーマの「オルベスコ」などたくさんある。どの薬もそうだが、新型コロナに転用して、仮に5割以下の患者にしか効かなくても、マスメディアは絶対に批判してはならない。そうでなければ、新型コロナの終息などあり得ない。

(文=横山渉/ジャーナリスト)

横山渉/フリージャーナリスト

横山渉/フリージャーナリスト

産経新聞社、日刊工業新聞社、複数の出版社を経て独立。企業取材を得意とし、経済誌を中心に執筆。取材テーマは、政治・経済、環境・エネルギー、健康・医療など。著書に「ニッポンの暴言」(三才ブックス)、「あなたもなれる!コンサルタント独立開業ガイド」(ぱる出版)ほか。

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