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今頃「PCR検査拡大」を言い出した安倍政権は、なぜ早期対策を怠ったのか?

文=藤野光太郎/ジャーナリスト

 厚生労働省が発表している推計値では、例年のインフルエンザの国内死者数は約200~1800人/年、本連載の初回に述べた「間接的な死亡も合算した超過死亡概念」では約1万人とされている。新型コロナで多くの比率を占める高齢者の「死」のすべての確定診断がPCR検査で確認されていなければ、「インフルエンザに比べて新型コロナによる死者は少ない」という言説は、少なくとも、ワクチンも治療薬もない今の時点では意味がない。

 本連載の初回から述べてきたように、対策は実態把握を前提とし、実態把握は素早い検査実施数の大きさに依存する。しかも、前回述べたように、検査後に感染すれば、その瞬間に検査結果の数字は意味を失うため、PCR検査は速攻で広く実施すべき施策だった。感染が広がり医療の受け皿が患者数に対応できなくなってしまった今ごろになって、専門家や執政者が「やはり検査数の拡大を」などと公言すれば、誰もが呆然とする。

 早い時期に行政が感染の実態を把握して感染分布と感染経路を押さえていれば、死者も今よりははるかに少なかったはずだし、自粛も早期に解除できたはずだ。もし「感染と死」の少ない理由が日本の特殊事情によるものであれば、なおのこと、国民としては対策の是非を問題視せざるを得まい。なぜ、日本では「素早いPCR検査」がなされなかったのか。

 問題は「対策の順序とタイミング」、そして「政治的思惑」である。

厚労省が医療現場に「合法的に診療拒否する対応」を“アドバイス”

 ここからが前回の続きだ。

 筆者の手元にある文書は、厚労省や日本医師会から関係各方面に送られた「事務連絡」である。ちなみに「事務連絡」とは、行政官庁内で上意下達される「通達」とは違って、官公庁が外部の機関に「周知」させることを目的としたものだ。

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今頃「PCR検査拡大」を言い出した安倍政権は、なぜ早期対策を怠ったのか?の画像3 今頃「PCR検査拡大」を言い出した安倍政権は、なぜ早期対策を怠ったのか?の画像4今頃「PCR検査拡大」を言い出した安倍政権は、なぜ早期対策を怠ったのか?の画像5今頃「PCR検査拡大」を言い出した安倍政権は、なぜ早期対策を怠ったのか?の画像6 同文書の表題は「新型コロナウイルス感染症が疑われる者の診療に関する留意点について」。日付は「令和2年3月11日」。政府が緊急事態宣言を行うための特措法改正案を閣議決定して国会に提出した翌日である。

 複数の文書中、厚労省による事務連絡は、同省の「新型コロナウイルス感染症対策推進本部」(本部長=加藤勝信厚生労働大臣)から、「各都道府県・保健所設置市・衛生主管部(局)」宛てに送付されたものだ。また、日本医師会からの事務連絡は、同医師会で「新型コロナウイルス感染症対策本部」の本部長も兼務する横倉義武会長と、同じく「感染症危機管理対策室」の室長を務める釜萢敏常任理事の連名で、「都道府県医師会長・郡市区医師会長」に送付されたものである。

 いずれの文書も、受信した各自治体や団体から即日、管区・域内の病院や保健所に回覧された。

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23:30更新
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