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新宿で「自由と生存のメーデー」開催…「非常事態宣言ヤメロ、30万円支給しろ」と要求

文=林克明/ジャーナリスト
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「自由と生存のメーデー2020」の様子

「昨日、派遣切りされて失業しました。政府が決めた10万円給付ではとても足りず、本当に毎月30万円給付してもらわないと生きていけません」

 政府が非常事態宣言延長を決定した5日後の5月9日午後、東京・新宿駅前のアルタ前広場で、前日に職場をクビになったばかりの派遣労働者(男性)がマイクをとって訴えた。

 全国労働組合総連合(全労連)、日本労働組合総連合会(連合)、全国労働組合連絡協議会(全労協)など全国組織の大労組が軒並みメーデーをオンライン開催するなか、フリーター全般労働組合とキャバクラユニオンが「今こそ街頭へ出よう」と呼びかけて開催された「自由と生存のメーデー2020」での発言だ。

 前日に職を失ったこの労働者は、酒類を運搬する物流会社に派遣されていたが、「自宅にこもる人が増えてアルコール消費量も増えるから、(自身の雇用は)大丈夫かもしれないと思ったのは甘かった」と言う。

 自宅での消費量は増えても、外食業の休業や時間短縮により、酒類全体の消費量は落ち込んでいるようだ。その結果、この男性はクビを切られてしまった。

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 休業しても給料が補償される一部の正規社員や正規公務員は別として、フリーター全般労働組合の集会に駆けつける人々は、補償を受けられずに今現在困窮しているか、1週間後や1カ月後が見えない人が多い。

 膨大な人々が生活に困窮し、将来への不安、新型コロナウイルスへの恐怖、先行きが見えないことなどから、社会全体のストレスが増大している。生活補償しない政府へのストレートな批判をする人々とは対照的に、他者を攻撃して自己の正義感を充実させる空気もある。

 その典型が「自粛警察」「自粛ポリス」と称される人々だ。休業に応じないパチンコ店を攻撃対象に選定し、大衆を扇動する吉村洋文・大阪府知事はその筆頭である。同じことをしようとしている小池百合子・東京都知事は、さしずめ自粛警察ナンバー2だろう。

 休業しない店よりも、休業要請だけして補償しない政府に批判の対象を向けるべきである。

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 そんななかで、前出の派遣労働者は次のように発言した。

「いま『生きる』ことがむき出しになっている。もっとも弱い人が先に死んでいます。自分のことを考えて『生きさせろ』と叫ぶことが、弱い人を踏みつけてしまわないか、という思いがよぎります。だから、弱い人が死なない社会をつくり、そこで自分も生き延びたいと思います」

 これは、いま一番必要な考えではないだろうか。

「2万円か3万円くらい貸してくれるところないですか?」

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 メーデー会場には、作家で反貧困ネットワークの世話人でもある雨宮処凛さんも駆けつけた。直前まで、同じ新宿区内で困窮者からの相談を受けていたという。

「私自身も2月から仕事が激減し、大変な状況です。今日も相談活動をしてきましたが、ご本人が百貨店で働いていて、夫はタクシー運転手、子供は派遣労働者、という女性からの相談もありました。生活が困窮し、3人合わせて10万円しかない状況で『2万か3万、貸してくれるところはないでしょうか』という逼迫した状況です。

 コロナだからというのではなく、今まで放置されてきた貧困問題が一気に表に出ているんです」

 まったくその通りで、現在多くの人が明日の生活もままならないくらい追い込まれているのは、コロナのせいにされ、それ以前の抜本的失政から目をそらさせるような傾向がある。

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 コロナ以前から政策的に貧困を拡大してきた政府・与党・財界の責任はどうなったのか。昨年10月1日から消費税が10%に増税。その結果、10~12月のGDPが年率換算でマイナス7.1%と、リーマンショックや東日本大震災後よりも打撃が大きかった。

 そこにコロナ禍が襲ってきた。ここで政策の大転換をはかり有効なコロナ対策も打つならまだしも、根拠薄弱な非常事態宣言を発し、命令(自粛要請)に従わない国民が悪いから終息しない、したがって非常事態宣言延長するしかない、という倒錯した態度を政府はとっている。

「非常事態宣言ヤメロ、一人ひと月30万円補償しろ」

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 集会の司会者は、こう言っていた。

「あいかわらず新宿は人が少なく、閉められた店も多い。そこで働いていた人はどこへ行ったのでしょうか。

 いったい政府は何をやっているのか。PCR検査を増やそうとしないことで、誰が感染しているかわからない。みんなで自由に集まることもできない。検査をしないことで私たちを分断していることに怒りをぶつけたい。医療危機にしても、感染症のベッドを大幅に減らし医療を縮小してきた安倍政権のせいです。そのツケを私たちに押し付けるな。

 この政府はいずれ倒れるでしょうが、1日も早くそれを早めるのが私たちの使命だと思います」

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 デモ行進では、人通りの少ない新宿の街で参加者たちは叫んだ。

「非常事態宣言を止めろ!」
「すべての住民にひとり一月30万円を支給しろ!」
「払えないなら倒すぞ、政府!」

 通常より人は激減しているとはいっても、非常事態宣言延長が発せられて以降、逆に少しずつ人が増えているように見える新宿の街。微妙な変化が現れ始めているようである。
(文=林克明/ジャーナリスト)

林克明/ジャーナリスト

林克明/ジャーナリスト

1960年長野市生まれ。業界誌記者を経て週刊現代記者。1995年1月からモスクワに移りチェチェン戦争を取材、96年12月帰国。第一作『カフカスの小さな国』で小学館ノンフィクション賞優秀賞受賞。『ジャーナリストの誕生』で週刊金曜日ルポルタージュ大賞受賞。

 最新刊『ロシア・チェチェン戦争の628日~ウクライナ侵攻の原点を探る』(清談社Publico)、『増補版 プーチン政権の闇~チェチェンからウクライナへ』(高文研)
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