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鉄鋼業界、全体が危機…かつて経験したことのない需要減退、JFEの経営悪化懸念広まる

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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 その後もJFEへの逆風は強まった。2019年、世界的な供給過多を受けて鉄鋼製品の価格は下落した。2019年、世界最大手のアルセロール・ミタルは4年ぶりの最終赤字に陥った。2019年年末ごろからは、中国の鉄鋼メーカーの生産が増加し、鉄鋼市況にはさらなる下押し圧力がかかった。

コロナショックによる需要の消滅

 2020年1月以降、過剰な鉄鋼生産能力を抱える中国を中心に、世界経済全体が新型コロナウイルスの感染に直撃された。コロナショックの発生により、JFEの業績懸念は追加的に高まっている。端的に、コロナ禍は世界の鉄鋼需要を消滅させているといっても過言ではない。国内だけでなく、海外でもJFEの高炉が一時休止に追い込まれている。さらに、国内の製鉄所では従業員の一時帰休(一時の休職)を余儀なくされている。同社はキャッシュの流出を食い止め、当面の財務内容の安定を目指そうと必死だ。

 問題は治療薬が開発中であり、コロナショックがどう収束するかが読めないことだ。治療薬などが開発されていない中で各国が感染から国民を守るためには、都市や国境の封鎖によって人の移動を厳しく制限するしかない。それによって、一時的に実体経済は落ち込む。つまり、需要が急速に冷え込み、生産活動が混乱する。

 その影響は、当初の想定を上回っている。その証拠に、米国の大手金融機関が公表する経済見通しを見ると、時間の経過とともに米国経済をはじめとするGDP成長率が下方修正されている。米議会予算局(CBO)は4~6月期の米実質GDP成長率がマイナス40%(前期比年率換算ベース)に達するとの予測を公表している。状況によっては世界経済が1930年代前半の“大恐慌”に匹敵する、あるいはそれを上回る停滞に落ち込む恐れは排除できない。

 この状況は、過剰生産能力が膨張してきた世界の鉄鋼業界にとって非常に厳しい。中国では、経済活動の再開とともに国有の鉄鋼メーカーの産出が高まるだろう。どの企業もできるだけ有利な価格で、より多くの鉄鋼製品を販売したいはずだ。

 公共事業などによって景気を持たせてきた中国では、資本の効率性が大きく低下している。これまで以上に鉄鋼需要が落ち込む展開は避けられず、世界の鉄鋼市況にさらなる下押し圧力がかかるだろう。構造改革を進め収益力の安定と向上を実現しなければならないJFEを取り巻く環境は一段と厳しさを増している。

高まる金融市場の不安定化リスク

 また、コロナショックは世界の金融市場の不安定性を高める恐れがある。そう考える一因として、原油先物価格が初めてマイナスに陥ったことは無視できない。現在、世界全体で原油の貯蔵能力が限界を迎えつつある。同時に、鉄鋼同様、原油需要は低下している。原油価格の推移は、米国の非投資適格級のシェールガス企業などが発行した社債などの価格に大きく影響する。さらに、世界的な低金利環境下、世界各国の大手金融機関がシェールガス企業などの発行したローンを証券化した金融商品(CLO)を保有してきた。

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