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白井美由里「消費者行動のインサイト」

なぜ人は「飽きる」のか?そのメカニズムに関する研究…「飽きない」ための4つの方法

文=白井美由里/慶應義塾大学商学部教授
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飽きを回復するにはバラエティを意識する

 4つ目は、そろそろ飽きてきたかなと思い始めたときは、その経験を類似する経験も含めて考えることです。これにより飽きの感覚が弱まります。そのことを実証したのがギャラクらの研究です。【註8】。ギャラクらは、好きな音楽を聞き飽きさせてから3週間後に再び聞いてもらい、楽しさを評価してもらう実験を行いました。このときに、その3週間の間に聴いた他の音楽やそのアーティストを思い出してもらった場合には、飽きてしまった音楽に対する楽しさの評価が上昇し飽きが回復しましたが、その3週間の間に見たテレビ番組を思い出してもらった場合には回復しませんでした。回復効果は音楽とは無関係のテレビ番組の想起では生じないことになります。同様の結果はスナックを用いた実験でも確認しています。

 つまり、飽きてしまった経験だけに注意を向け、何度も繰り返したことを意識すると飽きはなかなか回復しませんが、同時に他の似たような経験をいくつか思い浮かべることによってバラエティを知覚すると、飽きてしまった経験に向けられる注意が減少するため、飽きから早く回復できるのです。これは飽きを感じ始めた経験についてもいえます。

 以上見てきたように、「飽き」は心理的なプロセスでもあり、次の経験までの時間をできるだけ空ける、経験を具体的に捉える、経験自体に注意を向けすぎないといったことにより、ある程度はコントロールできます。また、楽しい経験自体にバリエーションをもたせることが飽きにくくすると思われます。例えば、高級チョコレートを食べる経験では、特定の専門店やブランドだけに注目するよりも複数の店やブランドをお気に入りに入れたり、そうした限定をせずに美味しい専門店を見つけることを楽しい経験として捉えたりすると、楽しさが維持されると思われます。

(文=白井美由里/慶應義塾大学商学部教授)

【参考文献】

【註1】Redden, J. P. (2008), “Reducing satiation: The role of categorization level,” Journal of Consumer Research, 34 (5), pp. 624-634.

【註2】Redden, J. P. and K. L. Haws (2013), “Healthy satiation: The role of decreasing desire in effective self-control,” Journal of Consumer Research, 39 (5), pp. 1100-1114.

【註3】Galak, J., J. P. Redden and J. Kruger (2009), “Variety amnesia: Recalling past variety can accelerate recovery from satiation,” Journal of Consumer Research, 36 (4), pp. 575-584.

【註4】Redden, J. P. and J. Galak (2013), “The subjective sense of feeling satiated,” Journal of Experimental Psychology: General, 142 (1), pp. 209-217.

【註5】Sevilla, J., J. Lu and B. Kahn (2018), “Variety seeking, satiation, and maximizing enjoyment over time,” Journal of Consumer Psychology, 29 (1), pp. 89-103.

【註6】Galak, J., J. Kruger and G. Loewenstein (2013), “Slow down! Insensitivity to rate of consumption leads to avoidable satiation,” Journal of Consumer Research, 39 (5), pp. 993-1009.

【註7】Brunstrom, J. M. and G. L. Mitchell (2006), “Effects of distraction on the development of satiety,” British Journal of Nutrition, 96 (4), pp. 761-769.

【註8】Galak, J., J. P. Redden and J. Krueger (2009), “Variety amnesia: Recalling past variety can accelerate recovery from satiation,” Journal of Consumer Research, 36 (4), pp. 575-584.

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