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2020年5月9日土曜夜、芸能人たちはなぜ一斉に“蜂起”したのか【後編】

「#検察庁法改正案に抗議します」への否定リプに小泉今日子は屈せず…芸能人たちの反撃

文=峯岸あゆみ
「#検察庁法改正案に抗議します」への否定リプに小泉今日子は屈せずの画像1
小泉今日子が、自身の個人事務所である「株式会社明後日」のアカウントで投稿したツイート。

 5月8日金曜からの衆議院内閣委員会における審議開始以降、多くの抗議活動が巻き起こり、11日月曜には日本弁護士連合会が反対の会長声明を発表、15日金曜には元検事総長を含む検察OBらが反対する意見書を法務省に提出、さらに18日月曜には元東京地検特捜部長らを含む検察OB意見書を公表するなど、法曹界内部からも批判の声が広がった「検察庁法改正案」。こうした反対の声を受け18日月曜午後、安倍晋三首相は急転直下、同法案の今国会での成立を断念した。

【前編】では、この法案に対する市民の側からの反対運動の中心となった、「#検察庁法改正案に抗議します」のハッシュタグを付したツイッターデモが5月8日金曜にどのように始まり、それが9日土曜の夜以降どのようにして大きなうねりとなっていったのかを、芸能人たちのツイートを追うことによってによって見てみた。

 続くこの【後編】では、芸能人らのそうしたツイートに寄せられたネガティブな反応について、当の芸能人たちはどのように“反撃”していったのかを見ていこうと思う。

(【前編】はこちらより)

元AKB秋元才加、怒りの反論

 検察庁法改正問題そのものとは別に、今回のムーブメントが投げかけたもうひとつの問題として、SNSに蔓延する「否定リプ」問題が挙げられよう。

【前編】で述べた通り5月10日日曜夜でひと段落したツイッターデモではあるが、影響力の大きい芸能人たちのツイートには、フォロワー数やリツイート数に比例して賛否それぞれの側からの大量のリプが付いた。否定的なリプには、「ファンだったのにがっかりした」「政治的発言をしないでほしかった」「わかってツイートしているのか」「ちゃんと勉強してください」といった内容のものが目立った。つまるところ、「タレントは本業以外の発言を控えろ」「タレントは政治的発言をするな」「タレントは政治問題など理解できないバカに違いない」というわけである。

 ちなみに、「ファンだったのにがっかりした」というリプ主のプロフィールやツイートを見ても、過去にその芸能人について一度も言及していないなど、本当にファンなのかどうかは疑わしい場合も多かったことは付言しておきたい。

 さて、こうしたネガティブなリプをスルーする芸能人も多かったが、反論する者もいた。元AKB48の秋元才加は、「内容が分かってるのか不安です。」なるリプに、「すみません。大きなお世話です。ありがとうございます。」とレスしてみせた。

 小泉今日子はリプの形をとらず、「私、更に勉強してみました。読んで、見て、考えた。その上で今日も呟かずにはいられない。#検察庁法改正に抗議します」とツイートしている。なお、彼女は否定的なリプに屈することなく、その後も連日、抗議の意を表明するツイートを続けている。

「#検察庁法改正案に抗議します」への否定リプに小泉今日子は屈せずの画像2
秋元才加のツイート。

きゃりーぱみゅぱみゅ、当該ツイートを削除

 一方できゃりーぱみゅぱみゅは、11日月曜になって自身の当該ツイートを削除。そのうえで、「リプ欄でファン同士が喧嘩するのが嫌だ」という削除理由を表明した。彼女のリプ欄で、同意派アカウントと検察庁法改正賛成派らしきアカウントとの罵倒合戦を指してのことだった。500万超の圧倒的なフォロワー数を誇る彼女は、当然のことながら否定リプのターゲットにもなりやすかったのだろう。

「#検察庁法改正案に抗議します」への否定リプに小泉今日子は屈せずの画像3
削除に際しての思いをつづった、きゃりーぱみゅぱみゅのツイート。

 またなかには、芸能人から芸能人へのリプもあった。常日頃より中韓批判や安倍政権寄りの発言を繰り返しているタレントのほんこんは、井浦新のツイートに対し、以下のリプを付けた。

「著名人の皆様 その勢いで 竹島、尖閣、北方領土、拉致被害問題、香港民主化 近隣諸国問題や その他諸々の問題も ハッシュタグつけて呟いて下さい。 よろしくお願いします。 #竹島 #尖閣 #北方領土 #拉致被害問題 #香港民主化 #近隣諸国問題 」

 彼がなぜ、数ある著名人のツイートのなかでも井浦新を選んでリプしたのかは不明である。

笑福亭鶴瓶、ラジオで検察庁法改正問題に言及

 11日月曜には、きゃりーぱみゅぱみゅのツイート削除の影響もあったのか、新たな芸能人のツイートはほとんど見られなくなる。

 12日火曜になると、これまで政治に関する発言のなかった女優の岩佐真悠子が、「中卒でね。元ヤンとかって事になってるけど、ちゃんと一応色々勉強してるしバカではないの。 #検察庁法改正案に抗議します」と遅れてデモの列に加わった。

 また同日、先述の通り当初より検察庁法改正の理不尽さをツイッターで訴えていた芸能人のひとりである俳優の豊原功補が、「いろんな考えもあって、様々な媒体で情報も溢れてきてます。しかしどうしても釈然としない。なので元よりの自分に従い、#検察庁法改正に抗議します」と、別ハッシュタグでツイートしている。

 そのほか女優の裕木奈江も、ハッシュタグこそ付けなかったが、5月10日日曜の時点で検察庁法改正の話題についてツイッター上で言及。

 一方、ツイッターをやっていない笑福亭鶴瓶が5月10日日曜、MBSラジオ『ヤングタウン日曜日』の生放送で検察庁法改正案の件に触れ、「歴史の教科書にあかん人載りますよ。この政権あかん人が多いなって出ますわ」との発言をしたとの報道もあった。『鶴瓶の家族に乾杯』(NHK)、『ザ!世界仰天ニュース』(日本テレビ系)などいくつものレギュラー番組を持つお笑い界の大物までもが、検察庁法改正案に対して否定的なスタンスを示したのである。これも、近年の芸能界には見られなかった傾向であろう。

百田尚樹「このリストは永久保存版やね」

 他方、安倍政権擁護派らしきアカウント(現在は削除)が、こうした著名人のリストを「#検察庁法改正案に抗議しますを訴えた反日くんたち」なるタイトルでツイッター上にアップ。作家の百田尚樹が「このリストは永久保存版やね。」とリプ。これに対し女優の裕木奈江が、「永久保存して誰が何にどう使うの?」とリプするという一幕もあった。

 ちなみに本稿では芸能人のツイートに限定して述べたが、綾辻行人、角田光代、京極夏彦、島田雅彦、乃南アサ、平野啓一郎、室井佑月ほかの作家、相原コージ、羽海野チカ、江口寿史、末次由紀、篠原千絵、しりあがり寿、美内すずえ、吉田戦車ほかのマンガ家、エッセイストの能町みね子、音楽評論家・作詞家の湯川れい子、歌人・俵万智、クリエイターのいとうせいこう、コピーライターの糸井重里など文化人も多数、件のハッシュタグを付けたツイートをしていたことも付け加えておきたい。

 糸井は最近、政権批判を否定するようにもとれるツイートをして一部にバッシングされていたが、その前言を撤回するようなツイートだったともいえよう。

 さて、この一連の現象、コロナ禍という特異な状況下における特異な出来事だという評価もある。「芸能人は政治を語るな」といった主張もなお根強い。

 だが、国民が政治に関心を持つこと、それについて詳しく知り、考え、自分の意見を表明することは、なんら否定されるべきものではない。芸能人たちもまた、市民であり国民であり、納税者であり有権者なのである。

「本当の事が知りたい」と鈴木砂羽

 最後に、2人の芸能人による、その後のツイートを紹介したい。

「ある程度調べて自分なりに理解する事は基本だと思うし、全く考えずに人に流されたりするのは良くないとは思う。けど特定の人しか政治の話をしちゃいけないとか、色々小難しくして牽制してきたり私の発言がかっこいいとか勇気ある発言となるのも、自分が望む社会とは何か違うなぁって気がしています」

「『残念だ』というお声、自分にもいただきましたが、支持政党はありません(選挙は毎年行きます)ただどちらかに傾かず、しかし疑うこと、調べること。それから真実を知ること。ワタシはコロナ禍の水面下で起きている本当の事が知りたいのです。」

 前者は秋元才加、後者は鈴木砂羽のツイートである。

(文=峯岸あゆみ)

「#検察庁法改正案に抗議します」への否定リプに小泉今日子は屈せずの画像4
鈴木砂羽のツイート。

【註:本記事において引用させていただいたツイートはすべて、原文ママの表記といたしました。また、勝手ながら敬称は略させていただきました。芸能人の方々に感謝するとともに、あらかじめお詫び申し上げます】

(【前編】はこちらより)

峯岸あゆみ/ライター

峯岸あゆみ/ライター

CSと配信とYouTubeで過去のテレビドラマや映画やアイドルを観まくるライター。ベストドラマは『白線流し』(フジテレビ系)、ベスト映画は『ロックよ、静かに流れよ』(1988年、監督:長崎俊一)、ベストアイドルは2001年の松浦亜弥。

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