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チバニアン、見学時の注目点と認定までの騒動概説…地球史上最後の地磁気逆転層が確認

文=水守啓/サイエンスライター
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チバニアン認定までの騒動

 ところで、千葉セクションが地磁気逆転層を明確に示すGSSP(国際境界模式層断面及び地点)と認められ、約77万4000~12万9000年前の地質時代が正式に「チバニアン」と呼ばれるようになるまで、紆余曲折があった。

「チバニアン」の国際学会への申請は茨城大学や国立極地研究所などの研究チームが進めてきた。だが、それに対して、茨城大学の楡井久名誉教授率いる古関東深海盆ジオパーク認証推進協議会の人々が国際機関等に待ったをかけたのである。楡井氏は、かつてはチバニアン申請を精力的に推進してきた人物だが、千葉セクションの地磁気データはねつ造されていて、地磁気の逆転が捉えられていないのではないかという疑義を投げかけたのである。

 楡井氏によると、2015年夏、千葉セクション国際巡検(現地見学)の際、科学倫理に違反する行為が行われたという。本来、地磁気の逆転層、中間層、そして地磁気が今と同じ層の3つが同一の露頭で確認できることを科学的に証明せねばならない。ところが、実際にはサンプル採取は白尾層の上位50センチまでしか行っておらず、その上のデータは田淵から1.7キロ離れた柳川セクションで得られたものを貼り付けたものだった。だが、それによって、体裁上、国際巡検の参加者らに対しては地磁気逆転に至る一連の変化をきれいに示すことができたというのだ。

 これに対し、研究チームの岡田誠茨城大学教授と菅沼悠介国立極地研究所准教授はその不備を認め、新たに白尾層の上位55センチから上を採取し、測定することに合意した。

 なぜこのような不備が生じたのか。岡田氏の弁解によると、千葉セクション(田淵)では露頭の高さが限られており、柳川のデータを使ったということだった。また、サンプル採取は行っていたものの、申請には他に優先事項があった。それで、数カ月間放置してしまったところ、サンプルは変色して分析できなくなってしまった背景もあったという。

 結局、岡田氏らは国際巡検の参加者らに対して、柳川のデータが含まれていたことを説明しなかったこと、そして、そのような行為に対する謝罪も反省も見られなかったことを楡井氏は不服とし、岡田氏らとの対立が生じることとなった。楡井氏らは国際機関にメールでデータの不備を報告していたため、岡田氏らにとって、白尾層の上位55センチから上での追加サンプルの採取は不可欠だった。また、千葉セクションがGSSPに認定されるには、研究のための自由な立ち入りが保障されることも条件だった。だが、岡田氏らにとってそれらは難しいものとなっていた。

というのも、楡井氏は千葉セクションの土地所有者から借地権を得ていたのである。そのため、岡田氏が現地に立ち入り、サンプルを採取するには、地権者の楡井氏に許可を取らねばならなくなった。そこで、仕方なく岡田氏は、立ち入りに関しては市に条例を整えてもらい(楡井氏は研究のための自由な立ち入りを認めていたが)、サンプル採取に関しては、千葉セクションから60メートル離れた市原市の管理地で行うことにした。ところが、新たにサンプルを採取した地点が楡井氏の土地だったことがのちに判明し、結果的に岡田氏は無許可でのサンプル採取、すなわち、楡井氏に言わせれば、盗掘を行っていたこととなった(警察に届け出られている)。

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23:30更新
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