NEW
佐藤信之「交通、再考」

総工費9兆円超…リニア新幹線、コロナ禍で一転してJR東海の“お荷物”になる懸念

文=佐藤信之/交通評論家、亜細亜大学講師
【この記事のキーワード】

, ,

 JR東海の2020年3月期決算では、連結営業収益は334億円の減である。新型コロナの影響額は、東海道新幹線304億円、在来線5億円におよぶという。対前年比は、それぞれ2.4%減、0.5%減である。

 東海道新幹線は、3月14日のダイヤ改正で増発した分に相当する臨時列車を運休し、4月11日からは定期列車の一部も運休して「のぞみ」を1時間に3本の運転とした。国鉄時代の線路修繕のための半日運休を除いて、開業以来の大規模な運休となった。

 JR東海は、昨年の10月29日に年度の運輸収入の予測を140億円上方修正して前期より243億円多い1兆4210億円としていた。これが新型コロナウイルスにより、前年度より310億円減少して1兆3656億円となった。今年度は、さらに影響が拡大しかねない状況にある。

JR東海の収支構造

 ところで、JR東海はリニア中央新幹線の建設を進めているが、東海道新幹線の輸送力の限界と、リニア技術の輸出が目的であるが、この大規模プロジェクトを可能にした背景には特殊な収支構造が存在している。

 国鉄が分割・民営化した際に、JR各社の利益が一定値に収まるように利益調整の措置が取られた。JR北海道、四国、九州のいわゆる「JR3島会社」には持参金として経営安定基金が与えられ、その運用益で鉄道の運輸収入の不足を埋めることになった。他方、JR東日本、東海、西日本のいわゆる「JR本州3社」には、運行する新幹線の車両・施設をJRが引き継がず、新幹線保有機構を設けて、JR本州3社はリース料を払って使用することになった。このリース料が各路線の負債額にかかわらず、収益力に応じて決められたため、東海道新幹線が総額の半分以上を負担することになった。

 もともと国鉄の社内で運賃収入をプールして建設費用を返済していた仕組みをそのまま継承したのであるが、別々の会社になっても、比較的建設時期が新しく未償却施設の多い東北、上越新幹線の負担を、減価償却が進んでいた東海道新幹線が被ることになった。東北、上越新幹線を運営するJR東日本は首都圏の通勤路線を経営して大きな利益を出していたので、なおさらJR東海にとっては不公平感が募ることになった。

 JR東海は、新幹線の施設を保有しないことから、設備投資に充てられる減価償却費が十分に計上できなかった。また将来新幹線に支払っているリース料が増加するのか、いつまで支払い続けなければならないのかという疑問を感じ、新幹線施設の譲渡を求めることになる。そして、JR他社も、少なからずメリットがあることからこれに同調し、最終的に平成3年10月に譲渡が実施された。

 この金額は総額9兆1767億円であった。そのうち1兆826億円は、整備新幹線の建設財源として60年間で返済し、残りの8兆939億円は国鉄改革時から数えて30年目、譲渡時点からは25年半後の平成28年度までに返済することになった。この部分はすでに返済は終了している。この譲渡代金を各路線へ配分する場合も、路線ごとの収益力に応じて調整されたため、JR東海の返済額は全体の55.5%にあたる5兆956億円にのぼった。

RANKING
  • 連載
  • ビジネス
  • 総合