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話題の書『あぶない英語』の著者・岩田雅彦氏に聞く

夫婦の危機を回避するために知っておきたい英語

文=岩田雅彦
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 国内での緊急事態宣言は解除されたが、いまだ新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、世界中の多くで「ステイホーム」を強いられている人たちは多く、リモートワークやオンライン授業、ショッピングなど、さまざまなオンラインサービスの利用が急増している。なかには動画配信やゲームなどを通じて、英語に触れたり、実際に英語圏の人とオンラインで交流したりする機会が増えたという人も少なくないはずだ。

 ただ、英語には、使い方を間違えると、ひどい誤解や怒りを招き、たったひと言でも人生を棒に振りかねない表現や、セクハラ、パワハラ、差別と認識され、大問題になる表現が多々ある。

 実社会を渡るための英語力を身につけることは、危機管理を徹底し、その背景にある英語圏の文化をも学ぶことにつながるだろう。

 そこで今回、類例のない教養本『あぶない英語』(幻冬舎新書)を上梓した岩田雅彦さんに、いま話題の海外ニュースから、ステイホームで夫婦や家族間で飛び交う「あぶない英語」について解説していただくことで、そうした危機管理を徹底し、日米問わず、コミュニケーションを円滑にするヒントをもらうことにした。

ロックダウン後、DVは本当に減っているのか?

 長引く自粛生活のなかで、何かとイライラしている方が増えています。ステイホームによってイライラした夫婦やカップル、家族が「あぶない英語」を発し、ときには暴力沙汰になるケースが伝えられ、DV(ドメスティック・バイオレンス)など、人間関係の不和が問題になっています。

 アメリカでは、Stay the fuck at home./ Stay the fuck inside. (家に居やがれ)という表現を目にする機会が増えました。他国でも、いまだに自宅待機、ロックダウンが継続され、人々のストレスは爆発寸前です。

 日本も同様です。マスクをめぐる争奪戦で口論になったり、新型コロナウイルスの影響で仕事が減った夫が、妻から「稼ぎが少ない」と言われ腹を立て、頭を平手打ちし、死亡させてしまう事件が起きたりしました。

 病院や保健所へ「なぜPCR検査をしてくれないんだ!」と怒鳴り込む人もいるでしょう。営業を自粛しないお店へ電話や貼り紙で怒りをぶつける人もいるでしょう。社会全体が疲弊して、その怒りの矛先が弱いところ、文句を言いやすいところ、たとえば家庭、医療現場、お店に向かっているのです。

 国連によると、6カ月のロックダウンで世界では3,100万(平時のケースを除く)のDVが生じるのではないかと予想されています。各自が独立した部屋を持ち、プライバシーが保たれていれば良いのですが、そんな家は多くありません。どんなに仲が良くても四六時中一緒にいたら、文句のひとつも言いたくなることもあるでしょう。仲が悪ければなおさらで、一触即発です。

 The New York Timesは、“ロックダウン後、DVの統計上の数字は減っているが、実際のところはどうなのか”と疑問を呈しています。つまり、ロックダウンでabuser(暴力をふるう人)と一緒に家にいる(監視下にある)ため、警察やホットラインに通報できない、させてもらえない可能性があるのではないかと危惧しているのです。

 実際、同紙は “social distancing and stay-at-home orders have fueled incidents of domestic violence in New York City” (ソーシャルディスタンシングとステイホームによってニューヨーク市のDVは加速した)として、いくつかの事例を挙げています。

 このThe New York Timesの記事は示唆に富んでいて、統計で騙されないための礎になると思います。統計に表れるDVの件数は、何を基準とするのか、どのように収集されるのかを考えなければなりません。ホットラインの相談件数か? 警察への相談件数か? その両方を合算したものか? 訴訟件数か? 被害届の数か?

 いずれにせよ、実態は反映されていないことがわかります。もしも、行政が、コロナパンデミック以前に予算を計上しDV対策をしていた場合、コロナによるロックダウンによってステイホームしているにもかかわらず、DV件数が減ったと、自画自賛することでしょう。まさに統計は、「正しいこと以外はすべて表現できる」(統計は恣意的に作られ、無知な人を騙すための手段となりうる)のです。数字は大切ですが、あくまでも参考資料のひとつでしかありません。

夫婦間で言ってはいけない「あぶないNG」ワード

 ニューヨーク市の委託でホットラインを運営しているNPOによれば、(電話による)相談件数は11%減ったものの、オンラインチャットによる相談件数は増えているそうです。

 また、CNNによると、ロックダウン中、ニューヨーク市のDV相談に関するウェブサイトへのアクセスは急増しており、チャットやテキスト(ショートメッセージ)での相談が増えているそうです。これらのことから、DV被害者は、電話などの手段では通信できない状況にあることがわかります。

 さらに、NEW YORK POSTによると、Massachusetts sees spike in domestic abuse 911 calls during coronavirus lockdown(マサチューセッツではコロナウイルスによるロックダウン中、DVによる911への電話が急増)と報じています。

 警察や消防に電話しなければならない深刻な状況になって、初めて顕在化するのでしょう。多少殴られたりするくらいでは通報できず、どうにもならなくなって通報されるのですから、手遅れ感は否めません。

 ちなみに、このspikeという単語は、コロナ禍におけるニュースでよく見かける単語です。スパイクというと、辞書では「大きな釘」が筆頭にあげられることが多く、一般的にはスパイクシューズのスパイクを思い浮かべる人が少なくないかもしれません。しかし、spikeとは、スパイクのような先端が尖った形状のもの、グラフの波形では尖頭を指します。つまり、急増している(ピーク近くにある、もしくはその過程にある)という意味になります。

 JAPAN TODAYは、コロナウイルスの影響は ‘catastrophic’ impact on women with domestic abuse up 20%(DVが20%増加し、女性に大打撃を与える)としています。コロナウイルスによるDV被害を “shadow pandemic” とも呼んでいます。

 New York州ではDV専用のホットラインを設置しています。

 DVと言うと、“酒乱の夫がちゃぶ台をひっくり返して妻に暴力をふるう”という昭和的なイメージを思い浮かべる人がいるかもしれませんが、DVは夫から妻へというパターンだけではありません。妻から夫、親から子、子から親など、さまざまなパターンがあります。配偶者の不当な扱いをspousal abuseと言います。暴力を受ける夫はmen who are being abusedと言います。

 夫婦間で言ってはいけないNGワードがあります。離婚(divorce)は夫婦にしか使いませんが、それ以外にも、夫婦に限らず、親子、友人でも気をつけて使わなければならない英語を紹介します。

divorce(離婚):夫婦間では最後のカードです。軽々しく使ってはいけません。
always(いつも):100%そうだと相手を完全否定してしまうので避けましょう。
never(決して~ない):100%ないと相手を完全否定してしまうので避けましょう。
shut up(黙れ):聞く耳を持たないという態度が良くありません。
calm down(落ち着いて):相手は自分が冷静だと思っていますから、そこに「落ち着け」というのは火に油を注ぐようなものです。
I don’t care.(気にしない):相手は突き放された感じがします。気にしてほしいのです。
You are not my mom.(あなたは私のお母さんじゃないでしょ):これはよく使われるフレーズで、喧嘩の原因になります。あれしろこれしろとうるさくお母さんのように言ってくることに対して発せられる言葉で、しばしば夫婦喧嘩の原因になる言葉です。
You are such as idiot.(バカみたいだな):バカと言われてしまうと返す言葉がなく、暴力に発展するかもしれません。
You have to do this.(これをしなさい):義務だと押し付けてはいけません。

言外の意味が発生してしまう「あぶない英語」に気をつけろ

 男女差への言及がはばかられる時代ですが、未だ男性が主たる収入を得ている家庭が多く、たとえ収入が対等であったとしても、自分こそが大黒柱だと自負する男性は少なくないでしょう。

 世の中には、“嫉妬は女性のするもの”というステレオタイプなイメージを抱いている人も少なくありませんが、もちろん男性も嫉妬します。なかでも、おじさんの嫉妬ほど恐ろしいものはありません。「プライドが」「メンツが」なんて言っているのはたいてい男です。男はプライドで生きているのです。

 そんな男性に、誰かと「比較」して評価することは、絶対にしてはいけません。比較をしたつもりはなくても、結果的に比較になってしまうケースがあります。

 たとえばお隣同士、二組の夫婦でバーベキューをしたとします。そして、A家の妻がB家の夫に対して以下のように言ったらどうでしょうか。

You are a dependable person.(あなたは頼りになりますね)

 悪気はなくても、A家の夫は、B家の夫より頼りにならないと受け止め、嫉妬する可能性があります。またB家の妻から、「色目を使っているのでは」とあらぬ疑いをもたれてしまう可能性もあります。

 同様に、下記のような発言も避けたほうが無難です。意図せずとも、言外の意味が発生してしまうため、「あぶない英語」になってしまいます。

I wouldn’t be stressed out, if I lived in a bigger house.(広い家ならストレスたまらないよね)
→この家は狭いからストレスがたまる。

Ted has a bigger house.(テッドさんちは広くていいよね)
→この家は狭いから嫌だ。

It seems that Cathy is able to get face masks anytime.(キャシーはいつでもマスクが手に入るらしいよ)
→うちはマスクが手に入らない(マスクを手に入れる能力がない)

If we have more money…/ I wish I had more money…
→お金があれば(うちにはお金がない)

Government employees have a stable income during the shutdown.
(公務員は安定していていいよね。こんなときでも給料もらえるんだから)
→うちは公務員ではないから安定していない。こんなときは給料をもらえない。

考えすぎ! そんなこと言ったら何も言えないじゃないか! と怒られそうですが、相手がキレてしまうのは、決まって些細なことなのです。

 以下は、相手を評価し、状況を的確に伝えるストレートな表現です。

The pay is way too low.
Your salary is low.
You earn little.
You make little money.
Your salary is nothing.
Your salary is peanuts.
Your salary is for the birds.
◎すべて「稼ぎが少ない」という意味です。

We cannot pay the bill.(光熱費を払えない)
We are going to broke.(破産しそうよ)
We are broke.(お金がない)

 時として、これら直截的な表現よりも、悪気のない表現のほうが、神経を逆なでする場合があります。ステイホームで、多くの人々がイライラしているので、ぜひ注意してください。

ステイホームで“コロナベイビー”世代が誕生する!?

 コロナの負の側面ばかり誇張した感じになってしまいましたので、最後に少し明るいニュースをお伝えしましょう。

 ステイホームで家にいる時間が増え、セックスをする人が増えているため、英語圏では、出生率がアップして、“ミレニアムベイビー”ならぬ、“コロナベイビー”世代が誕生するのではないかと言われています。コロナ禍で世界最大のゴムの産地で、コンドームの主要生産国・マレーシアのゴム生産が縮小し、コンドーム不足にもなっていますから、可能性としては充分あり得ると思います。

 また、Newsweekは “New York City Releases Guide to Safe Sex During COVID-19 Pandemic(ニューヨーク市は新型コロナパンデミック下における、安全なセックスの指針をリリースした)という記事を掲載しています。

 コロナ時代のセックスを特集するくらいですから、それだけ、ステイホームでセックスしている人が多いと言えるのでしょう。

 妊娠・出産時の医療体制や母子感染などといった懸念材料はあるものの、コロナで多くの尊い命が失われ、希望を失う人が多いなか、新たな命が生まれることは、希望の光のように感じます。さて、日本ではどうでしょう。ステイホームで出生率がアップすると思いますか?
(文=岩田雅彦)

【参考記事】
https://www.nytimes.com/2020/04/17/nyregion/new-york-city-domestic-violence-coronavirus.html
https://edition.cnn.com/2020/04/07/us/nyc-domestic-violence-website-surging/index.html
https://nypost.com/2020/04/29/massachusetts-sees-spike-in-domestic-abuse-911-calls-during-coronavirus-lockdown/
https://japantoday.com/category/world/coronavirus-to-have-%27catastrophic%27-impact-on-women-with-domestic-abuse-up-20
https://www.redbookmag.com/love-sex/relationships/g4658/questions-to-ask-your-partner/
https://healthtalk.org/womens-experiences-domestic-violence-and-abuse/coercive-controlling-behaviour

岩田雅彦

岩田雅彦

1972年静岡県生まれ。大阪府立大学非常勤講師、近畿大学非常勤講師として英語を教える。英検1級。大学で採用される一般教養英語教科書の常連執筆者。イギリスの大学院と大阪大学大学院医学研究科(単位取得満期退学)で公衆衛生を学ぶ。その後は医療関連の会社、およびIT関連の会社を経営。著書に『あぶない英語』』(幻冬舎新書)、『ネットで儲ける! 輸出ビジネス』』(すばる舎)、『海外投資&海外オークションの英語』』(明日香出版社)、『医学部入試英語の戦略的勉強法』』(エール出版社)、など。

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