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鷲尾香一「“鷲”の目で斬る」

報じられないタクシー業界の壊滅的状況…平均年収300万円台、客が1日2人、長時間乗車

文=鷲尾香一/ジャーナリスト
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「Getty Images」より

 新型コロナウイルス感染拡大の影響でさまざまな業種で経営が悪化し、事業継続が危ぶまれる事態が発生している。特に多くのメディアでは連日のように飲食店の苦境が取り上げられているが、外出自粛はタクシー業界も“壊滅的”な打撃を受けている。

 タクシー業界では東京のロイヤルリムジングループが運転手約600人を解雇するとのニュースが大きな話題となった。同社の問題は一転二転して、結局は雇用を継続することになったが、同社の問題が象徴するように多くのタクシー会社が経営危機に直面している。

 まずは、タクシー業界の現状を見てみよう。2018年度のタクシー総車両数は23万305台となっており、法人が18万4188台(事業者数6082社)、福祉輸送限定が1万3802台(同1万632社)、個人3万2315台となっている。福祉輸送限定は事業者数と車両台数がほぼ同じなので、そのほとんどが個人企業だということがわかる。

 タクシー業界では02年の改正道路運送法が施行された時、09年のタクシー事業適正化・活性化特別措置法の施行、14年の改正タクシー事業適正化・活性化特別措置法の施行と数度の規制緩和などを経て、長引く需要減少と供給過剰が相まって、07年度の法人22万2522台、個人 4万4769台をピークとして車両台数は減少の一途をたどっている。こうした厳しい環境のなかで、新型コロナウイルスという災厄が降りかかった。

 タクシー会社の多くは、車両数10台までの会社が69.3%(1万1574社)、従業員が10人までの会社が61.5%(1万254社)となっており、資本金も個人企業が27.7%(4625社)、500万円未満が36.0%(5988社)と中小・零細企業が圧倒的に多く、規模的には飲食店とほぼ同程度だ。それだけに、経営を維持する体力的にも飲食店と同様に脆弱なところが多い。

 タクシー業界全体の従業員数は31万6807人で、このうち27万3126人を運転者が占めているが、ピーク時だった07年度の38万1943人から大幅に減少している。この背景には、タクシー需要の減少に加え、全産業の男性従業員の月間労働時間が178時間であるのに対して、男性のタクシー運転者は195時間と労働時間が長く、全産業の男性従業員の年収が560.97万円なのに対して、男性のタクシー運転者は360.38万円にとどまっていることなどがある。このため、運転者の平均年齢は60.0歳と高齢化が進んでいる。

「労働時間は長いし、翌朝までの夜勤がある。その上、給与は安い。若い間はいざ知らず、高齢者にはきつい仕事だ」(60代運転者)

地方では住民の生活交通を維持する手段

 タクシーの1台あたりの1日の乗車客数は16.5人で、年間13億9100万人を運んでいる。この結果の営業収入は年間1兆5700億円だが、その73.3%が人件費、6.1%が燃料費に消える。多くのタクシー運転者は、基本給に歩合給が加わった分が給与となっているが、タクシー会社は新型コロナウイルスの影響で売り上げが減少しても基本給の支払いがあり、大きな負担となる。

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