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曽和利光「人と、組織の可能性を信じる世界のために」

「強い組織文化」がある企業ほど、長期的には“業績が低下する”理由

文=曽和利光/株式会社人材研究所代表
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「Getty Images」より

組織文化信仰の始まり

 ビジネスパーソンにとっての古典的名著『ビジョナリーカンパニー』(ジム・コリンズ著、日経BP社)などのあたりから、多くの人々は「強い組織文化を持つ会社は業績も上がる」と当たり前のように信じるようになりました。「強い組織文化を作り上げる」ことに否定的な意見を聞くことはほとんどなく、多くの企業が強い文化につながる経営理念や行動規範を作ろうとしています。現代においては、強い組織文化とは組織マネジメントにおける絶対的な存在のようになっています。

文化が強い状態とは

 そもそも「強い組織文化」とは、どのような状態を指すのでしょうか。エドガー・シャインによれば、組織文化は「集団が外部に適応したり、内部を統合したりする中で生み出された、基本的仮定のパターンである」と定義されます。ここでいう基本的仮定とは「その組織のメンバーが共通して持っている価値観や信念」を指します。つまり、「強い組織文化」とは、その中身はともあれ、ある価値観がトップから末端に至るまで深く浸透していて、全員がその価値観に基づいて行動していることを指します。

行動を規制する強い文化

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『組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス』(曽和利光/伊達洋駆/ソシム)

 そう考えると、組織文化とは社員の行動を規制し、縛るものとも言えるでしょう。別の言い方をすれば、社員が自律的であることや、プロアクティブであることなどを、強い組織文化は妨げてしまうこともあるわけです。特に文化とは明文化されていない潜在的なルール、「不文律」です。明文化されたルールであれば、俎上に上げて改正の議論をすることもできますが、「不文律」は人々が無意識のうちに従っているだけのものなので、変えるのか、変えないのかという議論さえなかなかできません。文化は極めて変えにくいルールなのです。

文化と業績には本当に関係があるのか

 文化をこのようなものとして考えた場合、冒頭で述べたように、多くのビジネスパーソンが半ば信じている「強い組織文化は業績にプラスに働く」というのは本当なのでしょうか。まず、さまざまな学術研究においては、今のところ文化と業績の間には「弱い関係しかない」という結果が多く出ています。さらに、企業業績の分析に時間軸を加えると、驚くべき結果が出ています。実は、文化が強いと企業の業績は短期的には向上するものの、長期的には低下しているというのです。

強い文化は変化への対応を阻害する

 強い組織文化によって長期的なスパンで企業の業績低下する理由は「変化対応能力が低くなるから」と考えられています。強い組織文化があると「文化の慣性が強くなる」=「そのままであろうとする力が強くなる」ために、組織文化を柔軟に変化させることが難しくなるのです。特に外部環境の変化が激しいと、強い組織文化は仇となるでしょう。その意味では、組織文化の強さよりも、「組織文化の中身が外部環境の変化に適応できているか」が重要なのかもしれません。

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