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ホームセンター、新型コロナ拡大で空前の活況…外出自粛でDIYやペット用品の消費が増加

文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント
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コーナンの店舗(「Wikipedia」より)

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛や臨時休業などで3月と4月は多くの小売業が売り上げを落とした。そうしたなか、ホームセンター各社は集客に成功し、売り上げを伸ばしている。

 ホームセンター最大手のDCMホールディングス(HD)の既存店売上高は、3月が4.2%増、4月(速報)が5.9%増だった。客単価はそれぞれ前年を大きく下回ったが、客数は3月が9.2%増、4月も9.2%増と大きく伸び、売り上げを押し上げた。

 コーナン商事も大きく伸ばした。既存店売上高は3月が9.0%増、4月が12.6%増だった。DCMHDと同様に客単価はそれぞれ下回ったが、客数は3月が14.7%増、4月が16.2%増と大きく伸びた。コメリも同様だ。既存店売上高は3月が4.0%増、4月が8.4%増だった。客単価はそれぞれ下回ったが、客数は3月が9.0%増、4月が11.1%増と大きく伸びている。他の大手ホームセンターも軒並み好業績だった。

 経済産業省の調査でも、ホームセンターが好調なことがわかる。同省が発表した3月の商業動態統計(速報)によると、ホームセンターの商品販売額は2722億円で、前年同月から3.4%増えた。商品別では、オフィス・カルチャーが15.9%減の129億円、カー用品・アウトドアが6.0%減の136億円とそれぞれ大きく落ち込んだ一方、家庭用品・日用品が11.4%増の622億円、ペット・ペット用品が4.9%増の211億円、DIY(日曜大工)用具・素材が4.2%増の600億円とそれぞれ大きく伸びている。

 ホームセンターをめぐっては、緊急事態宣言の発令に伴う休業要請の対象にするかどうかで一悶着あった。大消費地である東京都は、当初はホームセンターを休業要請の対象とする方針だったものの、政府が「安定的な生活を営む上で必要だ」などとして営業継続を求め、方針が割れた。結局は政府の主張を東京都が受け入れるかたちで、ホームセンターは休業要請の対象から外れることになった。

 ホームセンターはスーパーマーケットやドラッグストアなどと同様に日用品の扱いが充実していることに加え、スーパーやドラッグストアでは扱いが少ない建築資材や防災用品、ペット用品が充実しているという特徴がある。ペット用品が充実しているということは案外重要で、もしホームセンターが休業となってしまえば、ペットのエサやトイレ用品を買えなくなる人が続出するだろう。ホームセンターが休業要請の対象から外れたのは、このことも大きく影響したと考えられる。

 いずれにせよ、ホームセンターは休業要請の対象から外れたため、こうした商品を求める人で賑わいを見せるようになった。

外出自粛や在宅勤務の広がりはホームセンターにとって追い風

 ホームセンターが誕生したのは1972年。郊外に駐車場を備えた大型店を構えて、豊富な品ぞろえと大量調達による安さを武器に集客するビジネスモデルで成長してきた。業界団体の日本DIY・ホームセンター協会によると、75~99年は年間100~200店程度のペースで増えたという。それに伴い、市場も拡大した。

 しかし、2000年以降は伸び悩むようになった。地方の人口減少や主戦場の郊外で出店余地が限られるようになったことなどで、市場は飽和状態となった。また、ディスカウントストアやインターネット通販など業種を越えた競争が激化し、勢力拡大が難しくなった。前出の協会によると、19年度の市場規模は3兆9890億円で、10年以上にわたり4兆円弱で推移している。ただ、10年代後半はわずかながらも市場は年々拡大している。

 近年の市場拡大の背景には体験型の「コト消費」の拡大がある。その代表格が「DIY消費」だ。ホームセンターで材料や工具を買って、自身の手で自宅のインテリアや庭をつくり変える人が増えているのだ。DIY消費が活況を呈し、ホームセンターも活気づくようになった。

 そうしたなか、近年のホームセンターは商品を単に売るだけでなく、売った商品で買い手の暮らしをどう豊かにするのかを提案することが求められている。約220店を展開するカインズは、こういった需要をターゲットに、工具の使い方の講座を開いたり、自社サイトで小物をつくる動画を配信したりしている。

 約1200店を展開するコメリも、コト消費需要の取り込みを図っている。商品の使い方の動画を配信したり、商品知識や技術水準を測定する「マイスター制度」を導入して販売スタッフの提案力を高めたりしている。

 カインズは郊外で成長を果たしたが、近年は都市部にも進出している。ここでもコト消費を意識している。17年に小規模の新型店「スタイルファクトリー」の1号店をオープン。売り場は従来の商品別ではなく生活様式別で区分けし、商品は既存の店舗と比べてプライベートブランド(PB)の比率を高くした。また、工作ができる工房を設置したほか、スタッフがつくった小物などに触れたりデジタルサイネージ(電子看板)に映るDIYの制作動画を見ながら休憩できるカフェを設置した。コト消費に対応した体験型の店舗といえるだろう。18年には2号店をオープンしている。

 こうしたコト消費の盛り上がりを受けて、近年はホームセンターが活気づいている。そして、新型コロナの影響でさらなる盛り上がりが見込まれる。日用品を買う場としてのほか、新型コロナの感染拡大を受けた在宅勤務の広がりで、自宅をオフィス化するための商品を買う場としてホームセンターに視線が注がれているのだ。もちろん、従来型のDIYを楽しむ人も増えるだろう。

 また、在宅勤務や外出自粛によって自宅で過ごす時間が増えたことで、癒しを求めてペットを飼う人が増えており、ペットの買い場としても関心が集まっている。3月の商業動態統計においてペット・ペット用品とDIY用具・素材がそれぞれ大きく伸びたことからも、それがよくわかる。

 コロナ収束後も在宅勤務の定着などで、こうした消費行動はさらに盛り上がりそうだ。そうなれば、ホームセンターには追い風となる。各社、その風にうまく乗れるのかに注目したい。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に勤務。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

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