
ある程度の年齢の社会人になると、周囲から注意されることもなくなってきますが、言うまでもなく、日頃から「返事の仕方」に気をつけるのは大事なことです。
私たちは返事の仕方によって、どういう人なのか判断されます。もしかすると私たちは、「頼りない」と思われていたり、「この人で大丈夫かな」と疑われるような返事をしながら、指摘されないままでいるかもしれません。ここで返事の仕方について考え、自覚を高めてみましょう。
「返事の仕方」から、どんな人材か見抜かれている
筆者が30歳くらいの頃、転職して入社したメーカーでのことです。同じ事業部に「はい」ではなく、「“ほ”~い」と返事をする社員がいて、驚いたことがあります。大卒で入社して2年目くらいの男性社員でした。たとえば誰かから「これを少し急ぎで」といった依頼を受けると、「承知しました」あるいは「はい、何時までにでしょうか」と答えるのではなく、「えーっ」と驚いてみせます。
それまで私が勤めていた職場には、そんな返事の仕方をすれば、咎められる風土がありましたし、どんな会社であろうと、社会人としてそんな返事をするのは、あまりに非常識的に思えましたから、こんな社員がいることを不思議に感じたものでした。
その社員は返事だけでなく、たとえば「おはようございます」という挨拶も「おはようござい“も”~す」(「ま~す」でもなく「も~す」)と言ったりします。自分の親しい人に、こんな人と一緒に働いているのを見られるのは恥ずかしいと感じるような話し方をする人でした。
翌年の春には新入社員が同じ事業部へ入ってきましたが、この社員がまた「しっかりした社会人」とは言いがたい話し方や返事をする人で、「はぁ」「ええ」という言い方さえも暗く、快活さや聡明さは感じることができませんでした。
このような社員は、先輩社員たちから注意されることもあるのですが、周囲はまともな返事を期待しても仕方がないという雰囲気になっていたように思います。
そうした返事しかできない社員が、バリバリよい仕事をするというのは想像しにくかったのですが、やはり彼らからは、できるだけよい仕事をしようという意思を感じることはありませんでした。会社に長時間いることはありますが、失礼ながら業務のスキルレベルは褒められたものではなく、それを高めようという志は持っていません。長期的に見て会社に貢献できる人材ではないと、他の事業部も含む多くの人が認識していたようです。
そして多くの人が想像していた通り、数年後、彼らは自分たちの曖昧な返事の仕方と同じように、その後のキャリアについてはっきりした考えもないまま、転職していきました。