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三浦展「繁華街の昔を歩く」

大宮、人気の郊外一大拠点の秘密…醸し出される“昭和の良さ”の正体

文=三浦展/カルチャースタディーズ研究所代表
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 もともと江戸時代の宿場町なので飯盛、宿場女郎などの娼婦がいたが、明治になると公娼廃止運動の影響で、彼女たちは一掃された。ところが明治6年に遊廓は「貸座敷」と名を変えて復活した。だが公娼設置反対勢力が再び強く反対し、結局大宮に公娼の遊廓はできなかった。それでも埼玉県内には大正9年時点で酌婦(私娼)が1005人、「達磨屋」と呼ばれる私娼を置く宿が500軒以上あり、県内170箇所に散在していた。あまり各地にあってはならないというので、県ではこれらを32箇所の指定地に酌婦を収容した。

 大宮にもその指定地があり、昭和33年の売春防止法施行まで存在した。大宮が今も埼玉県内のみならず関東一円の中でも有数の大規模な歓楽街となっているのは、それが一因である。

大宮、人気の郊外一大拠点の秘密…醸し出される“昭和の良さ”の正体の画像1
昭和9年の地図。大宮駅周辺に、料理店、タクシー、カフェ、芸妓屋など、華やかなモダン文化が花開いていることがわかる。

昭和の雰囲気が残っている

 こうした歓楽街の要素を大宮は今も色濃く残している。特に駅東口の南側、いわゆる南銀座商店街は無数のキャバクラ、スナックが密集している。昭和の雰囲気の小料理屋、大衆食堂、大衆酒場なども多く、サラリーマンの味方である。そんな中でも私が気に入っているのが駅前の酒場「いづみや」と、高島屋裏の「多万里(たまり)」だ。

 特にオススメは「多万里」である。ここの味付け卵は絶品である。甘くねっとりしていて、とっても美味い。1個100円しかしないので、2、3個は食べたい名物である。ラーメン、焼きそばなども、すこし甘めの味付けで、おそらく女性が料理しているのではなかろうか。家庭的なおふくろの味ともいえるもので、くせになる。

 近年若者に昭和喫茶が人気であるが、大宮にはその名も「珈琲専門館」と「伯爵邸」という、やたらに食べ物が充実した昭和喫茶が残っている。特に「伯爵邸」は家族連れ、デートのカップルなどで満員である。

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伯爵邸

「昭和喫茶」の次は「昭和デパート」だ

 高島屋も素敵だ。だが日本橋や新宿の高島屋とはまったく異なる。規模も小さく、きらびやかさはない。まさに昭和の百貨店の様子を残しており、目隠しをしてここに連れて来られれば、どこかの地方都市の地元百貨店だと勘違いするであろう。こののんびりした雰囲気。地元に愛されている感じ。流行の最先端とは無縁の落ち着き。いやあ、いいなあ。なんだかとても懐かしい。

 これからはこういう「昭和百貨店」「昭和デパート」が人気になるに違いないと私は確信する。都心のおしゃれすぎる百貨店やファッションビルも疲れる。買う物もない。かといってユニクロでは洋服が並んでいるだけだ。衣食住、あるいは書店など、ひととおり何でも揃っていて、のんびり歩いて見て回るだけでも、なんとなく楽しい。そういう店が求められる時代がまたきっと来るだろう。

(文=三浦展/カルチャースタディーズ研究所代表)

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