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ソニーの年間研究開発費、アップルのたった3カ月分…GAFA並み企業不在の日本の危機

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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 さらに盛田昭夫氏が持ち運び可能で一人で音楽を楽しむコトは多くの支持を得ると考えた。それがウォークマンのヒットにつながり、好きな時に、好きな音楽を一人で楽しむという今では当たり前のミュージックライフを創造した。こうしたソニーのヒストリーを確認すると、新しい発想を用いたモノの創造こそが、人々の新しい生き方という需要を生み出すことがわかるだろう。そこにモノづくりの本質、重要性がある。

コロナショックがもたらす世界経済の変化

 今、日本には、かつてのソニーのように創造力を発揮し、新しい需要を生み出そうとする人材、企業が必要だ。新型コロナウイルスの感染拡大によって、人々が当たり前に思ってきた経済活動は急速かつ大きく変化している。

 大きな変化の一つに、デジタル化の急速な進行がある。コロナショックの発生により、世界全体でソーシャル・ディスタンス(人と人の距離をとること)が当たり前になった。欧米では外出制限などが緩和されているが、飲食店、小売店などへの客の戻りはかなり鈍いようだ。また、経済活動の再開とともに感染が再拡大する恐れもある。

 世界各国は感染症を念頭に置きつつ、今後の経済運営を練らなければならない。医療崩壊を防ぐためにオンライン診療の重要性が高まっている。多くの分野で人との接触を避けつつ、これまでにはない満足度を提供する取り組みも進んでいる。スポーツ分野では感染リスクを避けるためにeスポーツへの人気が高まっている。わが国の景気持ち直しに重要な役割を果たした観光分野ではバーチャル・リアリティ(VR)を用いたVRトラベルが注目を集めている。

 さらに、世界全体で働き方が変化している。テレワークの推進によって、オフィスに通勤する必要性が低下し、事業継続に必要な人材がより明確になった。長い目線で考えれば、企業の組織運営やビジネスモデルは、個人の能力をより重視したものに変化する可能性がある。ブロックチェーンを用いた業務の自動化・省人化などもこれまで以上のスピードで進む可能性が高い。それとともに、タブレット端末やノートパソコン、さらには大型のデータセンターへの需要も高まっている。世界全体でデジタル技術の重要性は一段と増すだろう。

 この中、米中の大手ITプラットフォーマーはデジタル技術を駆使して変化に対応し、成長を目指している。一方、日本経済は機械や自動車産業に支えられてきた。日本がIT先端分野での変化に対応することは容易ではない。

高まるオープン・イノベーションの重要性

 今後、企業は既存の事業セグメントやビジネスモデルに固執するのではなく、需要が高まると期待される分野に積極的に経営資源を再配分しなければならない。その実現に向けて、企業間の“オープン・イノベーション”をより大規模に進めることが求められるだろう。中国では政府の指揮の下でBATHを中心に国家全体でオープン・イノベーションが推進されている。

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