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有料で放棄できるルール
そして、建物が寿命を終えたら予め準備しておいたお金で解体する。跡地については売れれば問題がないが、もし売れず、またそのまま土地が放置されていることに問題がある場合には、放棄料を支払うことで、国・自治体の管理下に移す仕組みについても提案してきた。放棄料は、固定資産税及び管理に要する費用の何年か分とする。これは土地所有者が有料で放棄できる仕組みである。お金を払って国・自治体に引き取ってもらうものであり、市場で売れない土地を、お金を付けて、つまりはマイナスの価格で国・自治体に売却する仕組みである。
現在、合法的に放棄できる仕組みとしては、相続放棄がある。相続財産すべてを放棄しなければならないハードルの高さはあるが、近年、その数は増加している。民法には、無主の不動産は国庫に帰属するとの規定があるものの、放棄されても国が受け取るわけではない。また、最後に相続放棄した人は、次に管理する人が決まるまでは管理責任が残るが、それも徹底されているわけではなく、相続放棄された後に宙ぶらりんで誰も管理しない物件が増えている。そして、放棄された物件が危険な状態に陥った場合、自治体が公費負担で処置せざるを得なくなっている。
今後、相続放棄によってこうした物件がどんどん増え、公費負担が増えていくくらいなら、いっそのこと相続時に限らず放棄できるルールをつくり、かつ、その後の管理費用に充当できるよう、放棄料を課したほうがいいのはないかというのが、筆者の提案であった。
人口減少時代の住宅・土地制度
以上2つの仕組みをまとめると次のようなものになる。まず、住宅を建設・取得した人は、将来必要になる解体費用をデポジットしておき(供託や固定資産税による徴収)、建物が不要となったらそのお金で解体する。跡地は売れればそれで問題がないが、売れない場合は、放棄料の支払い(=マイナスの価格)で、国・自治体に引き渡し、公的管理下に置く(管理が必要な場合)。管理の必要性のない場所ならば、土地が自然に返れば問題ないということになるかもしれない。
右肩上がりの成長、人口増加の時代においては、不動産価値は上昇を続け、次に取得したい人が出てくる可能性が高かったため、最後の解体の問題を考えておく必要はなかった。しかし、人口減少時代においては、次に取得したい人が出てくる可能性が低くなっており、最初に取得した人が最後の解体やその後の土地管理の問題をも考えなければならなくなっている現実を直視した仕組みである。