ビジネスジャーナル > ライフニュース > 日本でコロナ死者が少ない理由は和食
NEW
石原結實「医療の常識を疑え!病気にならないための生き方」

日本で新型コロナ死亡者が圧倒的に少ないのは「和食」が要因と考えられる理由

文=石原結實/イシハラクリニック院長、医学博士
日本で新型コロナ死亡者が圧倒的に少ないのは「和食」が要因と考えられる理由の画像1
「Getty Images」より

日本で新型コロナ死亡者が圧倒的に少ないのは「和食」が要因と考えられる理由の画像2

 上の表はコロナウイルス感染による死亡者数と感染者数の各国比較である。日本人の死亡者数は、欧米各国の死者数に比べて極端に少ないことがわかる。この点について、米国の外交誌「foreign policy」(電子版)は、「ウイルス検査を受けた人は人口の0.185%と著しく少なく、ソーシャルディスタンスのとり方も中途半端」で「日本の新型コロナウイルス感染対策はことごとく見当違いに見えるが、結果的に死者数は奇跡的に少なく、対応が奇妙にうまくいっているようだ」とし、「結果は敬服すべきものだ」としながらも、「単に幸運だったのか、政策が良かったのかはわからない」と結んでいる。

 そして日本の死者数が少ない理由として、次の点を挙げている。

(1)他人を思いやる気持ちが強い文化

(2)握手をしない習慣

(3)衛生意識の高さ

 その他、ツベルクリン反応で陰性の人に接種するBCG(結核予防ワクチン)の摂取義務のある日本、韓国、インドなどが、その義務のない欧米諸国(ポルトガルは例外)と比べてコロナウイルス感染による死亡率が低いことを指摘する学者もいる。

 しかし、こうしたマクロ的な「生活習慣」より、細胞・遺伝子レベルで原因を究明しようとするのが“too scientific”な昨今の西洋医学である。京大、阪大、慶應大など全国の有名国立・私立大学の医学部でコロナウイルス感染症の重症化にHLA(ヒト白血球抗原)やサイトカイン(白血球から分泌される情報伝達物質)をはじめ、遺伝子がかかわっているのではないか、という研究が始められている。

 一方、英国での複数の研究は、「コロナウイルス感染症の重症化のリスクは肥満が影響している」との見解を示唆している。調査機関のICNARCも、「ICU(集中治療室)に入ったコロナウイルス感染症の患者の70%以上が肥満」と指摘している。肥満度はBMI(Body Mass Index)で表される。その計算式は以下のとおり。

・体重(キログラム)÷身長(メートル)÷身長(メートル)である。

 身長170センチメートル、体重70キログラムの人のBMIは、

・BMI=70÷1.7÷1.7=24.22

となる。リバプール大学で1万7000人の死亡リスクを調査したところ、「BMI=30超の人は、30以下の人に比べて1.3倍」という結果を得ている。一時はコロナウイルス肺炎が重篤化し、医師団が「死亡」の発表の準備をしていたというジョンソン首相(55歳)の体重は110キログラムを超えており、BMI=35であったという。ちなみに「BMIが30以上(肥満)」の人の割合は以下のとおり。

・米国=37.0%

・英国=30.0%

・イタリア=23.0%

 日本はわずか「4.4%」にすぎない。

 去る5月13日、大相撲の三段目の力士、勝武士さんが「コロナウイルス肺炎による多臓器不全」で亡くなった。28歳の若さであった。国内での20代の死亡は初である。勝武士さんは、地方巡業や力士の引退花相撲などで演じられる「初っ切り」(相撲の禁じ手などを実技を交えて、コメディー風に面白おかしく紹介する)の名人で、5年以上も受け持っていた。誰からも愛される明朗な性格で、28歳での若死にはいかにも惜しまれる。勝武士さんは力士としては超小柄な166センチで、111キロ。だがBMI=111÷1.66÷1.66=40.3となり、力士なので当然であるが「超肥満」である。

欧米食による「肥満」は病気のもと

 こう見てくると「コロナウイルス感染症」で死亡のリスクを上げる大きな要因は、肉、卵、牛乳、バター、マヨネーズに代表される高たんぱく、高脂肪、高カロリーの欧米食の食べすぎによる「肥満」といえるのではないだろうか。

 米国人があまりにがん、脳卒中、心臓病、糖尿病、肥満などが多く、医療費が国家財政を圧迫する原因になるとして1975年、米国上院に「栄養改善委員会」が設けられ、医学者と栄養学者に全世界の食事と病気・健康の関連について調査を依頼した。それまでの国の内外の膨大な研究論文が解析され、その結論が77年に“Dietary Goals”(食事の目標)として、発表された。そこには、

(1)一日のエネルギー摂取の55~60%を炭水化物にすること

(2)一日のエネルギー摂取の30%未満に脂肪の摂取を抑えること

などが記されており、具体的には、果物、野菜、未精白の穀物(玄米、黒パン)、イモ類、鶏肉、魚、スキムミルク、植物油を多く摂取し、牛乳、肉、卵、バターをはじめ、高脂肪食、塩分は控えめに摂るように、としている。

 そして、「和食こそ世界一の健康食である」というくだりもある。その結果、米国内に和食レストラン、寿司屋、天ぷら屋などが数多く建てられ、一般家庭内でも和食を食べる(毎日ではないにしても)人も増えた。

 34年後の2011年には、それまで毎年100万人以上の米国人の命を奪っていた心筋梗塞による死亡率が「58%減」、がんによる死亡率も「17%減」という快挙が達成された。つまり「和食」は「健康食」「抗肥満食」「抗病食」なのである。

 コロナウイルス肺炎(感染症)による日本人の死亡率が欧米諸国に比べ極端に少ない要因は、われわれ日本人が毎日食べている「和食」にあると私はにらんでいる。日本には「食は命なり」という金言がある。ドイツの詩人ゲーテは、

“Mann ist was er isst.”(人はその人が食べるものそのものである)

という名言を残している。

(文=石原結實/イシハラクリニック院長、医学博士)

石原結實/イシハラクリニック院長、医学博士

石原結實/イシハラクリニック院長、医学博士

1948年長崎市生まれ。長崎大学医学部を卒業後、血液内科を専攻。「白血球の働きと食物・運動の関係」について研究し、同大学大学院博士課程修了。スイスの自然療法病院B・ベンナー・クリニックや、モスクワの断食療法病院でガンをはじめとする種々の病気、自然療法を勉強。コーカサス地方(ジョージア共和国)の長寿村にも長寿食の研究に5回赴く。現在は東京で漢方薬処方をするクリニックを開く傍ら、伊豆で健康増進を目的とする保養所、ヒポクラティック・サナトリウムを運営。著書はベストセラーとなった『生姜力』(主婦と生活社)、『「食べない」健康法』(PHP文庫)、『「体を温める」と病気は必ず治る』(三笠書房)、石原慎太郎氏との共著『老いを生きる自信』(PHP文庫)、『コロナは恐くない 怖いのはあなたの「血の汚れ」だ』など、330冊以上にのぼる。著書は韓国、中国、台湾、アメリカ、ロシア、ドイツ、フランス、タイなど世界各国で合計100冊以上翻訳出版されている。1995~2008年まで、日本テレビ系「おもいッきりテレビ」へのレギュラー出演など、テレビ、ラジオ、講演などでも活躍中。先祖は代々、鉄砲伝来で有名な種子島藩の御殿医。

日本で新型コロナ死亡者が圧倒的に少ないのは「和食」が要因と考えられる理由のページです。ビジネスジャーナルは、ライフ、, , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!