ビジネスパーソン向け人気連載|ビジネスジャーナル/Business Journal
4.新型コロナ後の世界では航空業界で特異な時が始まる
混沌としたアフターコロナの世界に正しい指針を確立するためには、強い意志とリーダーシップ、そして全産業の中で最も国際的なこの産業から、国家主義者の考え方を排除する必要がある。
5.航空地政学上の対立
コロナ危機で生き残る航空会社は、まず政府の支援を受けた中国の会社だ。ほかの多くの大手航空会社の株価は50%以上下落したが、中国の3大エアラインの株式は10%ほどしか値下がりしていない。そして4月13日の週、中国の航空会社はついに供給席数の比較で、常に首位を守ってきた米国を抜いて世界一となった。もっとも、中国の首位は短期間で終わる可能性もある。
米国の大手航空会社は政府に対して大きな力を持っており、補助金を得ようと激しく動いている。欧州諸国の国家主義的な政府は、その国々で選ばれた航空会社を支援する。一方、ほかの多くの民間エアラインにとって見通しは必ずしも明るくない。つまり今後は各国の国家主義的な要素があらわになり、航空地政学的衝突が予想される。
仮に「政府間の協調」がなければ、そうした衝突は航空機製造業、航空宇宙メーカー、リース業、そして資金供給者など、多くの派生する関連産業の活動にとって破滅的な事態をもたらすだろう。
6.政府間の協調が不可欠
“アフターコロナ”は世界がこれまでとはまったく違うものになる可能性が高い。しかし、政府間の協力を始めるのに、航空業界より相応しい場はない。今後健全なエアライン体制を確保するためには、膨大な数の利害調整が必須である。近年、新たな雇用のうち航空関係が占める割合は約20%に達しており、観光産業はLCCの参入に依存するようになっている。
世界が最悪の状況になる前に、航空業界、ICAO、EU、IATAは新たな体制の確立に向かって対話を始めなければならないのだ。
7.未来のために協調ができなければ、保護主義に陥り、競争が激減
もし世界が協調できなければ、国家主義的なものがはびこり、航空業界が適者生存にはならず、自国の政府に最も支援を受けてきた航空会社だけで成り立つようになる。それは21世紀の世界が必要とするものではない。世界の航空業界は大きな難題を抱えているといえよう。
(文=新井俊郎/航空経営研究所主席研究員)