NEW

日産、中堅社員の一斉流出が始まった…赤字6千億円超、内田社長では再建は絶望的

文=河村靖史/ジャーナリスト
【この記事のキーワード】, ,

コミットメント経営は跡形もない

 内田社長はオンライン記者会見で「(過去の)失敗を認めて過度な販売拡大は求めない。財務基盤を強化して将来の成長につなげる」と経営再建に自信を示した。しかし、赤字体質が続き、2兆円を超える有利子負債を抱え、倒産の危機からV字回復を果たした20年前と同じ規模の構造改革費用を計上しながら「リストラの内容が甘く、再建に向けた道筋は不透明だ」(日産系サプライヤー)との見方が広がっている。

 1999年に策定した再建計画「日産リバイバルプラン」(NRP)では、国内5工場の閉鎖、人員2万1000人削減、系列解体、購買コストを3年間で20%削減することなどを掲げ、黒字化や有利子負債を半減する時期を明示した。当時、ゴーン氏は、これらはコミットメント(必達目標)で「達成できなければ(日産を)辞める」と宣言、背水の陣で挑む姿勢を強調した。経営計画に数値目標と達成度合いを明確に打ち出す手法はコミットメント経営と呼ばれ、日産のその後の成長の原動力となった。

 これに対して今回の構造改革計画で示された経営に関する数値目標は、2023年度にマーケットシェアを2019年度の5.8%から6.0%と小幅アップすることと、営業利益率を5.0%以上に引き上げること程度だ。しかもこれらはコミットメントではなく、「持続的成長が可能な事業への道筋」として示した程度。経営責任を明確化するコミットメント経営は跡形もない。

 リストラも踏み込みが甘い。インドネシア工場とバルセロナ工場の閉鎖を正式に決定したが、固定費削減のキーとなる人員削減計画については「今回の計画はリストラをメインにしたものではない」(内田社長)として明かさなかった。甘い経営陣を見越したようにバルセロナ工場では閉鎖を発表した翌日、従業員が反発、タイヤを燃やすなどの抗議活動が起こるなど、今後、閉鎖に向けた作業が難航する可能性もある。

 そもそも構造改革計画で示された「バルセロナ工場を閉鎖して英国サンダーランド工場を維持する」という戦略を疑問視する声がある。日産の欧州事業は低迷しており、今後も成長は難しい。しかも日産はアライアンスを組むルノーと、それぞれの強みに集中して足りない部分はアライアンスの力を活用することに合意しており、日産の欧州事業はこの市場に強いルノーに任せたほうが効率的だ。日産の工場のある英国はEU離脱が決定しており、ホンダも英国工場の閉鎖を決定している。あるサプライヤーは「英国工場の閉鎖に踏み切らないところに、日産経営陣の危機意識の低さが現れている」と見る。

日産元幹部「経営再建は無理」

 収益回復に向けた購買コスト削減も「甘さ」が目に付く。NRPでは、収益が急回復し、1年前倒しでコミットメントを達成したが、その原動力となったのが購買コスト低減活動だ。サプライヤーとの株式持ち合いを解消して、しがらみを排除するとともに、調達先を絞り込み、発注数量を増やす代わりに大幅なコスト低減を要求した。

RANKING

5:30更新
  • 企業・業界
  • ビジネス
  • 総合