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タクシー業界、時給3000円台から“実質400円”に激減…歌舞伎町でマスクなしのホストに遭遇

文=後藤豊/ライター兼タクシードライバー
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「gettyimages」より

 タクシー業界は「景気のバロメーター」とも言われる。また、乗客の行き先次第で運転手の“時給”に大差が生じるなど、運の要素が高い業種でもある。

 コロナ騒動で各業界が大打撃を受ける中、もっとも影響が大きいとされたのもタクシー業界だ。緊急事態宣言が全面解除されてから2週間が過ぎたが、人の流れはどのように変わったのだろうか。数名の運転手の声を集めてみた。

時給3000円台から“実質400円”に激減

「時給400円じゃ、やってられねーよ」

 千葉県某市のタクシー運転手は開口一番、こう嘆いた。5月の手取りは6万円。会社が10万円を無利子で貸し付けてくれたものの、家賃を支払うと8万円しか残らないという。

「自慢じゃないけど、俺はうちの営業所で売り上げベスト10にいるんだ。10年以上やってきて、毎月の手取りは30万円あったよ。それが一気に6万円。5分の1になっちゃったよ。朝5時に営業所を出るだろ。最寄りの駅につけても、乗せられるのは7時以降だよ。駅から客が降りてこないんだから。1時間半も無駄になるけど、早く並ばないと、ほかのやつらに客を持っていかれちゃうからな」

 あまりに暇なので、待ち時間に自分の時給を計算したという。

「6月5日の金曜日は、朝5時から20時まで15時間やって3万円(税込み)だった。1時間あたり2000円だ。ここから税金を1割引いて2万7272円だよね。この45%=1万2272円が支給額だ。15時間走って1万2000円ということは、時給800円だよ。

 しかも、俺たちは1日出たら翌日が休みだから、実質400円だ。国が定めた最低賃金(千葉県は923円)に全然届いてないよ(苦笑)。

 この商売、いいときは時給3000円になるんだ。給料日後の土曜日なんか飲んでる人が多くて、22~29時の7時間で4万5000円ぐらいは売り上げた。1割引いて4万900円だよな。税抜きで4万円以上稼ぐと手取りが55%に跳ね上がるから、支給額は2万2495円。時給にして3213円だ。つまり、今は最高時の4分の1以下にまで落ち込んでいるんだ」

 毎日ため息しか出ない、と嘆くのも致し方ない。モチベーションは最悪だという。

新宿歌舞伎町、マスクなしのホストに戦々恐々

 別の運転手も、減収で首が回らないという。

「コロナ前は、平日でも終電後の3時間で1万円は稼げました。それが今は、終電後に1回乗せられるかどうかです。この前、歌舞伎町のドンキ前で待機してたんです。重そうな荷物を持った客が『近くてすいません』と言って乗ってきました。運賃は420円でした。心の中で『歩けよ』と思ったけど、口にはできません。降りるときに『お釣りはいいです』と言われたのが救いでした」

 この3時間の売り上げを時給換算すると、チップを合わせても790円にしかならない。

「俺の後ろに並んでいた同僚は、千葉の成田まで行ったそうです。高速代を含めて2万8000円。行って帰って2時間だから、その間の時給は6000円以上ですよ。良かったね、と笑ってあげましたが、ホントついてないです」

 この通り、運にも左右されるのがタクシー運転手という職業だ。

「ただ、新宿に行くのは怖いです。3、4人のホストがこちらに向かってきそうになり、ヤバいと思って逃げちゃいました。ホストクラブは集団感染が起きている業界ですし、仕事明けだったのか、マスクをしていなかったんです。

 今はお客さんとの会話も減りました。というのも、私は昼間、病院につけるんですが、病院だと会話による感染の恐怖を感じるんです。だから、車の窓は必ず開けていますし、雨の日も少しだけ開けさせてもらっています」

都内のタクシーは4割休車だが…

 タクシー業界の売り上げは「乗客とタクシーの台数のバランス」がキモである。 たとえば、乗客が100人いてタクシーが50台あったとしたら、1台あたり2人を乗せる計算となる。コロナ前の平日15時頃は2組ぐらい乗せることができたが、今は同じ時間帯で1組乗せられるかどうかだ。

 簡単に言うと、乗客が半減しているのにタクシーの台数は減っていないわけだ。東京都内のタクシーは4割ほど休車しているが、千葉県ではそこまで休ませていないという。

 冒頭の運転手が事情を語ってくれた。

「俺がつけている駅には、3つのタクシー会社が入ってるんだ。その3社のうち、2社は出庫台数を減らしてる。今の状況ではガス代のほうが高くつくからな。しかし、うちだけは台数を減らしてないんだ。出庫台数を半分に減らせば燃料費も半分になるだろ。1台あたり4000円として、20台減らせば8万円。ひと月あたり250万円くらい節約できる。その分を休んでいるドライバーの休業補償に回せば、ドライバーの水揚げ(売り上げ)も増えるのにな。

 会社としても、月の売り上げが半分以下になってるんだから、少しでも出費を抑えるべきなのに。そんなこともわからない経営者の下で仕事をしているわけだ」

 そんな中、チップが増えたと語る運転手もいる。

「乗り込んできたときの空気で、話しやすそうな客に『お客さん、景気はどうですか』なんて問いかけると『どうにかなってるよ。運転手さんはどう?』なんて言われます。話が弾めば、チップを置いてってくれるんです」

 明るく元気にお客さんを迎えるというのは、どの業界でも大事なことだ。SNSにアップされた営業報告では、20時間で10万円(税込み)を売り上げた都内の運転手もいた。1割の税額を引いて9万円。この額だと手取りは60%になるため、5万4000円、1時間あたり2700円となる。2日分なので2で割ると、時給1350円だ。

 一方で、やる気を落としているベテラン運転手の時給は、冒頭の通り実質400円ほど。900円以上の差が生じるというのも、タクシー業界の実情である。

(文=後藤豊/ライター兼タクシードライバー)

後藤豊/ライター兼タクシードライバー

後藤豊/ライター兼タクシードライバー

1966年千葉県生まれ。東京都内の中小会社でタクシードライバーを兼務するライター。競馬と野球をメインに、雑誌や書籍で執筆をしている。主な著書に『テイエムオペラオー伝説』『競馬 伝説の名勝負 GⅠベストレース』(ともに星海社、共著)などがある。

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