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小黒一正教授の「半歩先を読む経済教室」

新型コロナ・V字回復プロジェクト…全国民が定期的に感染状況を検査で確認できる体制が重要

文=小黒一正/法政大学教授
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 まず、感染拡大の抑制と社会活動・経済活動の両立を図るためにもっとも重要なのは、全国民が希望すれば新型コロナウイルスの感染の状況を定期的(2週間に1回程度)に知ることができ、継続的に陰性の人びとは安心して外出や仕事を再開できるような体制を遅くとも半年以内につくることが、次のステップに進むためにもっとも重要である、というものだ。

 このうち、「感染の状況を定期的に(全国民が2週間に1回)知ることができる」の意味は2つある。一つはマクロ的な感染状況、もう一つはミクロ的な感染状況だ。

 検査はPCR検査に限らず、抗原検査や抗体検査を含め、高精度で有用性が高い検査は積極的に取り入れることは当然だが、マクロ的な感染状況については抗体検査が重要となる。現在のところ、わが国でもいくつかの抗体調査が実施されているものの、サンプル数などに問題があり、潜在的な感染者数も正確にわかっておらず、まずは大規模な抗体調査を定期的に行い、マクロ的な感染状況を把握する必要があろう。

 また、ミクロ的な感染状況については、「感染の状況を定期的に(全国民が2週間に1回)知ることができる」ためには、一日1000万件の検査を行う必要があるが、抗原検査、LAMP法や唾液で感染の有無を調べるPCR検査用試薬なども対象としている。

 我々が闘う敵はウイルスであり、「『命』を守るか、『経済』を守るか」という観念的な二項対立を続けていても、この問題を解決することはできない。仮に緊急事態宣言が解除されても、感染が再び拡大し、医療崩壊を防ぐために自粛が再開される可能性もある。新型コロナウイルス対策の「出口」とは、「命」か「経済」かの二項対立ではなく、徹底した検査により、人びとが安心して消費、教育、運動、レジャーなどの社会生活を送れるようになる「命も経済も守る出口戦略」ではないか。

ポール・ローマー教授の提言

 このため、アメリカ経済学会で重鎮のニューヨーク大学のポール・ローマー教授(ノーベル経済学賞)は一日2000万件の検査を提言している(Romer, 2020)。また、イギリスの感染症学者チーム(Peto, et al. 2020)は一日1000万件、ロックフェラー財団(Allen, et al. 2020a)は3000万件/週、ハーバード大学の倫理センター(Allen, et al. 2020b)は一日500件以上の検査を提言しており、その鍵を握るのが検査の拡充だ。以下、簡単に説明しよう。

 まず、感染症対策の基本は「検査」と「隔離」であり、感染拡大の抑制のため、その徹底が必要であることはいうまでもない。一方で、すでに外出制限や営業自粛による資金繰り悪化やコロナ関連倒産が出始めているが、そもそも、感染していない人びとのほうが多いはずだ。にもかかわらず、多くの人びとに外出制限や自粛が要請される理由は何か。それは、感染の有無に関する「情報の非対称性」が存在するからだ。また、我々も自分自身の感染の有無を判断できないケースも多い。だから、外出制限や自粛により、他人との接触を減少させようとする。

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23:30更新
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